越ヶ谷町の訴願書と同時に、郡長より県知事に提出された弁明書によれば、越ヶ谷町の不均一賦課を要する理由が明白でない点が、不認可処分の理由である、とある。すなわち町村税の賦課は、町村制の規定で均一の税率による徴収が原則であるが、ある種の税に関し不均一の賦課をなすは「其税目ガ他ノ諸種ニ比シ、負担ノ均衝ヲ失スル場合」(同七八二頁)である。戸数割付加税は従来より増加しておらず、車税も越ヶ谷町以上の賦課率で均一に課している粕壁町ほか、他の町村の納税状態もかわっていない。
越ヶ谷町が不均一課税として高率を課そうとしている電柱税を実施すれば他町村に波及し、工業振興政策上会社設立に影響する。また大正元年と二年の不均一賦課の許可は、車税を一〇銭軽減し自転車税を一〇銭増すものであったが、車税軽減により納税成績の向上が結果したのではない。大正二年度は町会計規程を設定し、町税を県税と同一切符によって徴収する同時徴収法により町税納入を義務づけたからである。
車税の滞納は、納税者が下層貧民であるため、納税の何たるか知らないからで、むしろそれを教示しない町当局の怠慢である。戸数割付加税も郡内平均は一戸四円一三銭余であり、越ヶ谷町と同じ他の町々の様子よりみても、一戸平均五円の負担は可能である。消防費も本来町村費支弁であるが、郡内では部落協議費からの支弁を慣行としており、この協議費を町税と同一視すべきでない。越ヶ谷町はこの協議費を町税に加えているので戸数割付加税が一戸当り五円以上となっている。したがって不均一賦課したいという越ヶ谷町の訴えは理由にならない、というものであった。