内務省への再訴願

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訴願をしりぞけられた越ヶ谷町は、同年十月十六日内務大臣宛に再び訴願書を提出した。知事の裁決は、越ヶ谷町の特殊事情をかえりみず町村自治制の精神に反するというのである。

 再訴願の理由書は、およそ四つの論点からなっている。第一に大正元・二年度の納税は「納税義務者ノ能力ヲ計リ人力車夫・荷車挽等ノ負担スル車税附加税ヲ比較的軽減シ、実業家ノ負担スル自転車附加税ヲ比較的増高シタルハ理事者年来苦心ノ存スル所」(同七九四頁)であり、郡役所による徴税法の改善によって納税成績が向上したのではない。納税の実態は町当局者が郡長以上に精通していることは論をまたない。郡長の弁明によれば、明治四十三年の水害による細民の困窮状況から、大正元・二年度の不均一課税を許可したが、大正三年度は水害の影響がなくなったので許可を取り消したという。しかし越ヶ谷町における納税成績の不良は大水害以前に始まっている。しかも越ヶ谷町は水害による被害が部分的であったが、耕作者でない人力車夫や荷車挽といった細民は水害に関係なく、かえってこの間の経済状態は良好であった。

 第二に新設の不動産取得税および電柱税は、昨年度越ヶ谷町に創立の帝国瓦斯力電燈株式会社に課するものである。この会社は越ヶ谷町に三万円余の資本を投下し、毎月八〇〇円の収入をあげており納税負担力は大きい。第三に戸数割税一戸平均五円以上の徴収は「其筋ノ方針」というが、これは郡長自身の方針である。この方針は町村の特殊事情をかえりみぬもので、特殊事情をくんで規定されている不均一課税方針に反する。しかも越ヶ谷町では、消防費は協議費であるとしても町費の一部分であり、これを含めると五円以上となっている。

 第四に去る六月九日、郡長は越ヶ谷町役場にきて訴願撤回を申入れてきたが、その際撤回すれば不均一課税を認め、撤回しなければ町予算を認めないと威したのは理解に苦しむ。町側に不当なことありとすれば、何故に町村監督者の郡長が「自ラ腰ヲ屈シテ町役場ニ至リ懇々トシテ平和ノ解決ヲ望ムノ意志ヲ表示スルノ」(同前)必要があるのか、というものであった。