十一月七日には緊急勅令として暴利取締令が出され混乱に乗じての生活必需品の買い占めや売りおしみが禁じられた。また支払延期令が出されて震災地における金銭債務の三〇日間の支出延期を認めている。十日すぎには国税・県税・町村税の延期も認められ、縁者の行方を捜すための上京も始まっている。県では臨時震災救護部を設置し、広く県下の篤志家より義捐金を募って死者一五円、負傷者八円、家屋全壊二〇円、半壊一〇円を支給し、避難民に対しても国庫支弁を申請し、生活困難なる者には一人一日二〇銭、衣服一人一枚宛を支給している。また本県に割当てられた皇室からの下賜金六万円余のうち、南埼玉郡には一万五四七二円が配送され、各村々に分配された。出羽村へも、小屋掛材料金五九二円、白米二四石余、味噌三二六貫が支給されている。
このような救助に加えて、村々では震災から立ちなおるための努力が開始された。出羽村では今後三年間厳守すべきこととして
(1)青年会・亭主講・嫁講・念仏講などの講事や宴会を禁ずる。
(2)祝儀・不祝儀とも質素として酒宴を禁ずる。
(3)勤倹貯蓄を励行する。
(4)酒・煙草を謹慎する。
(5)火の用心と衛生に注意する。
(6)贅沢を禁ずる。
などを申し合わせた。桜井村では震災復興貯蓄組合を結成し、五年間冗費を節約して四万円の貯蓄を達成するよう計画した。出羽村では所得税および県税戸数割免除の請願も行なっている。