各村矯風規約の設定

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南埼玉郡役所では、既述した大正七年十二月の県の風俗改善申合規約励行の件に基づき、翌八年一月町村長会議の際、その規約準則の設定方を本郡地方改良調査会に委任し、その成案を得たうえ、これを管下町村に示達した。その準則により市域の各町村では矯風規約を設定し、同年八月三十一日から一斉に実行に移した。現在市域には桜井・出羽・大袋各村の矯風会史料が残っているが、矯風規約の設定目的を「人情に厚く隣人相互の助け合いを深め村民自治の基礎を固くする」といっている。

 各村民はすべて矯風会に加入する義務があり、大字単位に各住民から署名をとったうえ、全村民が協力して風俗の改善運動をおこそうとするものであった。各村では本規約を実行するため区(大字)ごとに励行委員、組合ごとに実行委員をおき、励行委員は区長、実行委員は組長をもってこれに充てた。

 出羽村の矯風規約では、各種会合の時間厳守、組合内における相互援助(冠婚葬祭・家屋建築修繕屋根替・戦時召集疾病その他止むを得ない事故により業務不如意・入営除隊送迎等)の徹底、従来の弊習(冠婚葬祭・入営除隊者の送迎・年始歳暮の贈呈・節句・七夜祝帯解き・神社祭礼・家屋新築の上棟式・諸講等の会合等)の矯正を促し、すべて質素を旨として虚礼華飾にわたるものは廃止するなどを詳細に規定していた。そしてもしこの規約に違背し、もしくは租税を滞納したり徴兵を忌避したり、理由なく児童を就学させないなどの行為があった場合には、本規約による公式の援助を停止するなどの強制処分も規定されている。

 また、冠婚葬祭などにおける制限(婚儀に要する料理は一人につき金三円以内、葬儀の膳部は同金一円以内、酒・引物は廃止、香奠は金一円以内など)外のことを行う場合は、実行委員の意見をつけて村長に伺いその承認を得る必要があった。この場合は村長の査定で五円以上百円以下の範囲で矯奢料を徴収し、この金を村の基本財産蓄積金に寄附することが義務づけられていた。また、村民は慶弔その他で無駄を省いた経費の一部を村の基本財産蓄積金に寄附することになっている。

矯風会規約

 このほか風紀改善の施策として、農村部における休日を整理し、国定祝祭日を娯楽の日と定めようとする県の通達は既述したが、出羽村では村行事を第13表のごとく決定、実行した。これはまた内務省が定めた民力涵養の五大要綱の国家観念の養成にも通ずるものであった。

第13表 大正8年出羽村行事
1月1日四方拝休業,国旗ヲ掲ケ松飾ヲナシ祝意ヲ表ス
午前9時ヨリ小学校新年式
1月2日休業,国旗ヲ掲ケ松飾ヲナシ祝意ヲ表ス
1月3日元始祭前日ノ通リ
2月11日紀元節休業,国旗ヲ掲ケ祝意ヲ表ス
3月1日新年祭休業,国旗ヲ掲ケ其意ヲ表ス
初午
3月10日陸軍記念日国旗ヲ掲ケ記念ノ意ヲ表ス
3月22日春季皇霊祭休業,国旗ヲ掲ケ其意ヲ表ス
4月3日神武天皇祭休業,国旗ヲ掲ケ其意ヲ表ス
雛節句
5月5日端午節句
5月27日海軍記念日国旗ヲ掲ケ記念ノ意ヲ表ス
6月29日開校記念日国旗ヲ掲ケ記念ノ意ヲ表ス
7月15日祗園祭
7月30日明治天皇祭休業,国旗ヲ掲ケ其意ヲ表ス
8月13日ヨリ16日マデ宇蘭盆休業,祖先ヲ祀ル
8月31日天長節休業,国旗ヲ掲ケ其意ヲ表ス
9月24日秋季皇霊祭休業,国旗ヲ掲ケ其意ヲ表ス
10月13日戊申証書下賜記念日青年会ニ於テ奉読式ヲ挙ク
10月15日鎮守例祭休業,国旗ヲ掲ケ其意ヲ表ス
10月17日神嘗祭休業,国旗ヲ掲ケ其意ヲ表ス
10月30日教育勅語下賜記念日記念ノ意ヲ表ス
10月31日天長節祝日休業,国旗ヲ掲ケ祝意ヲ表ス
11月23日新嘗祭国旗ヲ掲ケ其意ヲ表ス,神ニ新穀ヲ奉献ス

(出羽村矯風会規約より)