トラホームの検診と治療

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埼玉県では明治四十年において、トラホーム治療費補助の方法を設け、町村が予防費を計上した場合は県費を補助するなどトラホーム撲滅の策を講じた。南埼玉郡役所では大正三年ごろから小学校児童にトラホーム患者の多いことを憂慮し、県の警察医の出張を請い、管下小学校を巡回させトラホーム検診を行わせた。このときの八条領各小学校児童の検診結果は第15表のとおりである。被検査人員二五一二名に対し、患者数は五四八名で、その割合は二一・八%に及んでおり、このうち二〇六名を手術した。その後も毎年管下各小学校の検診を続行し、トラホームの撲滅を期したので、児童のトラホーム患者は次第に減少していった。

第15表 自大正3年12月至同4年1月 八条領各小学校児童トラホーム検診施行成績表
学校名 検査人員 トラホーム 手術人員 帯患者百分比
重症 中等症 軽症
八和田小学校 199 1 5 43 49 19 25.29
149 0 9 20 29 11 19.46
潮止小学校 244 0 10 30 40 17 16.39
176 1 6 19 26 7 14.76
八条小学校 169 0 16 30 46 21 27.22
158 1 8 20 29 11 18.35
川柳小学校 223 0 7 57 64 18 28.70
171 0 4 46 50 17 29.24
蒲生小学校 149 2 9 20 31 18 20.80
116 1 4 15 20 11 17.24
大相模小学校 199 1 10 29 40 17 20.10
207 1 13 29 43 14 20.76
増林小学校 221 1 15 28 44 14 1991
131 0 11 26 37 11 28.24
1,404 5 72 237 314 124 22.4
1,108 4 55 175 234 82 21.1
合計 2,512 9 127 412 548 206 21.8

(桜井村衛生部大正4年度)

 また、明治四十年には壮丁のトラホームおよび花柳病予防規程を定め、県警察医をしてこれが検診を行うこととした。大正二年の南埼玉郡の壮丁トラホーム、花柳病検診人員は、一三〇三名で患者はトラホームが三〇二名(二三・二%)、花柳病が二三名(一・八%)で、トラホーム患者の内一〇五名には施術治療を行なっている。その後も衛生思想の普及と検診の徹底により、六年にはトラホーム患者は一四・四六%、花柳病患者は二・八%、昭和六年には一三・三五%と〇・一二%と次第に減少していった。

 なお、一般町村民に対するトラホーム予防は、本県下の場合、大正八年から県が補助金を支出して奨励するようになった。