藁生産

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南埼玉郡の農家副業としてほとんどの農民が生産したのが藁製品である。藁製品は縄、莚(むしろ)、菰(こも)、叺(かます)、俵、蔟(まぶし)、草鞋(わらじ)、草履(ぞうり)等に分類される。北葛飾郡の町村とともに、南埼玉郡新方村・増林村・大相模村・川柳村・八条村等、合計一町一二ヵ村で、中川縄莚叺同業組合を大正十四年二月二十三日、農商務大臣の認可をうけて設立された。この組合は縄莚叭製造業者とその売買業者とによって、生産の向上と営業の利益を目的として組織されたものであり、大正十五年には桜井・大袋村もこれに加入した。この同業組合の組織はその後拡大を示すことが第25表によってわかる。南埼玉郡における藁製品生産は、農家副業として大正十年の製造戸数四九八九戸、産額六四万九二四五円から、昭和五年製造戸数五〇二九戸へと微増するが、産額は一四万九一七九円と四分一以下に下落する(大正十年の水準を回復するのは昭和十五年になってからである)。製品内容も、菰・蔟・草鞋・草履であるが、大正末年から昭和にかけては減産傾向にあった。そこで農家副業としての藁製品の商品価値を高めるため生産・販売業者の同業組合が設立されたが、藁生産の衰勢は依然進行した。第24表でみた蒲生村の藁細工生産価額も、大正十年頃を境に生産が停滞していることがこれを裏付けている。

第25表 縄莚叺製造・販売業者と生産個数
大正14.2成立 大正14末 大正15上半
製造業者数 4,020人 6,110人 6,706人
売買業者数 157人 168人 184人
大正14.11中 大正14.12~15.5 大正14.12~大正15.5
新方村 増林村 大相模村 川柳村
縄類 検査数 43,801 554,063 43,075 35,008 15,286 17,666
合格数 43,726 511,617
不合格数 75 42,446
莚類 検査数 10,997 98,128 5,392 1,422 9,166 9,788
合格数 10,955 96,160
不合格数 42 1,968
叺莚類 検査数 458 20,911 15,019 5,692
合格数 458 19,873
不合格数 1,038
合計 検査数 55,256 673,102 48,467 36,430 39,453 33,146
合格数 55,139 627,650
不合格数 117 45,452

(『新方中川縄莚叺同業組合関係書類』)