桜井村耕作組合では組合結成直後に埼玉県へ補助金申請の手続をおこない、五月十七日に補助金九五円の交付が認められた。補助金交付に伴い「稲作成績報告」と「耕作組合ニ隣接スル既整理地稲作成績及耕作組合設置ノ既整理地ニ隣接セル未整理地稲作成績報告」の提出が年末に求められている。また補助金交付により試作地を設置しその試作者の住所氏名を報告することも義務づけられていたのである。耕作組合の事業に関しては、南埼玉郡を単位とする耕作組合長協議会が組織され、郡の行政指導の下におこなわれた。郡は管下町村の各耕作組合に対してその町村農会や青年会と連絡をとり具体的な農事改良事項を指定する強力な行政指導をおこなった。それは(一)毎年二月末迄に翌年度予算編成の報告を郡長に提出すること、(二)稲作品種の統一を図るため二十町歩に一反の割合で採種田を設置し埼玉県の奨励する「虎ノ尾」、「改良愛国」、「白目」、「福島」、「関取」、「天竺」、「〆張」、「金子」などの試作をおこない、適当な品種の組合員への普及をはかること、(三)共同苗代の設置による品種の統一と害虫駆除の励行をすること、(四)二反歩以上の試作地を設置すること、(五)二毛作栽培の奨励をなすこと、(六)年に用排水路浚渫を二回以上、雑草刈払は三回以上おこない、道路畦畔の改良をすること、(七)害虫駆除に関し誘蛾灯の設置等をはかること、である。
桜井村耕作組合の大正二~三年の歳入出予算は第26表のとおりであるが歳入は土地所有者への反別割と県費補助によっており、歳出は、事業費が基本的かつ主要な項目で、各種農作物採種場一反歩に付き二円の補助、各種子共同塩水撰諸費、道路橋梁堤塘修繕人夫賃と藻刈・縁刈その他修繕人夫賃の一日一人三五銭、桶管橋梁等修繕費で大正二年に合計三九八円、三年に四七二円五〇銭が計上されている。
県奨励稲作種子の採種田収穫籾の村内希望者への配布も三年四月に実施された。模範試作は各希望者が一、二種の品種を一、二反歩に作付けして投入肥料名、同使用量、移植・施肥月日、採間、畦間、除草月日を調査するものであった。前年の大正二年における桜井村の試作者は二名でその経営内容は労銀、負担等にいたるまで報告されているが、この三年における模範試作の結果は不明である。四年には緑肥大豆栽培も奨励された。桜井村耕作組合は大正四年も県費補助九五円を交付されるが、この段階までの事業内容は主として稲作改良にあり、郡の行政指導の七項目全体はカバーしきれていない。
しかし大正五年三月十六日の桜井村耕作組合委員会で解散の決議がなされたのである。その理由は、県の補助金打切りは桜井村の事情では耕作組合事業の推進が不可能であるというものであった。耕地整理の進行に伴い、稲作改良を図る耕作組合の設立が補助金交付により進められたが、補助金廃止と共に耕作組合もまた解散してしまったのである。
科目 | 大正2年 | 3年 |
---|---|---|
円 | 円 | |
組合員割 | 16 | 6.40 |
反別割 | 373 | 373.00 |
県費補助 | 100 | 186.50 |
雑収入 | 1 | 1.00 |
合計 | 490 | 566.90 |
科目 | 大正2年 | 3年 | 備考 |
---|---|---|---|
円 | 円 | ||
事務費 | 28 | 21.75 | |
会議費 | 25 | 40 | |
事業費 | 398 | 472.50 | 採種場補助,種子精撰,道路堤塘,用排水等 |
表彰費 | 25 | 15 | 精農家,義僕貞婦孝子の表彰 |
予備費 | 14 | 17.65 | |
合計 | 490 | 566.90 |
(桜井『耕作組合規約及往復書類』)