公民権の拡大

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明治二十一年に制定された町村制は、同四十四年四月に全面的な改正が行われ、市町村は新たに公法人に規定されてその機能と負担の範囲が明確にされた。この改正点の主なものは、市町村会の召集開閉権や吏員の任命権を市町村長の権限にするなど執行機関の権限が拡大されたが、同時に市町村会議員の任期を六年から四年に改め、従来三年ごとにその半数が改選されたのを全員同時に改選すると定められた。また他に本業を有する名誉職町村長は、国政に参与できる町村公民権所有者中年齢三〇歳以上の者から選ばれるとあるのを年齢の制限が廃止されている。

 その後第一次世界大戦後のデモクラシー的風潮の高揚を反映し、大正十年再度公民権の拡張と等級選挙制の改廃をおりこんだ町村制の改正が行われた。すなわち市町村における公民権の資格は、従来二年以上市町村税を納め、かつ地租もしくは直接国税二円以上の納入者とされていたが、国税を納めない者でも、二年以上その居住する地の直接市町村税の納入者であれば公民権の資格が与えられることに改められた。これによって選挙権がいちじるしく拡大され地方自治は大きく前進したが、これらは郡制の廃止や普通選挙法実施の前触となるものであった。

 また大正十五(昭和元)年、町村長や助役・収入役の選任は府県知事の認可を必要としないことに改められたが、さらに昭和四年地方制度の充実がはかられ、市町村条例の設定や変更は、内務大臣の許可制から府県知事の許可制に移された。市町村債・特別税・間接国税付加税ならびに役場施設等使用料の新設や改変も、従来内務大臣や大蔵大臣の許可を必要としたが、同じく府県知事の権限に属すよう改められた。また市町村会議員は、議決事項について議案を発する権利は認められなかったが、発案権が認められ、地方団体の自主性が高められた。