災害対策本部の設置と救援活動

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災害発生と同時に、これら被災者に対し各方面から救援の手が続々と差しのべられた。まず災害発生第二日目からはコッペパン、塩、タバコ等の緊急物資の特配についで、衣類、瀬戸物類、薪炭、障子紙、畳等の生活必需品が被害程度に応じて配給された。また脱脂ミルクほか一二品目のララ(アジア救済連盟)物資が、食べ方の念入りな説明書や効能書つきで配給されたのも災害発生の翌日のことであった。その後も床上浸水など被害の大きかった家庭に対しては、各地から寄せられた義捐物資の特別配給が続けられた。この一例を桜井村役場の〝お知らせ〟によってみると、次のごとくであり、このときは抽籖によって分配されていた。

   被水害床上浸水者に配給のお知らせ

     昭和二三、三、一一日  桜井村役場

  床上浸水者! 一戸一名(九七戸)来る三月十三日午前正九時、本村役場へ御集合下さい。

  1、左記衣料品義捐物品として本村へ入荷、当日抽籖を以て分配します(一戸一品)。認印忘れず御持参下さい。

   抽籖番号        品目        入荷数

   一番ヨリ一二番ノ方ヘ 開襟シヤツ       一二

   一三~一六  〃   ポールシヤツ       四

   一七~二六  〃   ステヽコ        一〇

   二七~三〇  〃   ランニングシヤツ     四

   三一~三五  〃   メリヤスシヤツ      五

   三六~四四  〃   作業衣          九

   四五~五一  〃   子供肌襦袢        七

   五二~五七  〃   子供パンツ        六

   五八~六三  〃   手袋カ靴下        六

   六四~九七  〃   作業衣         三四

  2、床上浸水者の内女子用洋傘(三一本)一本一九八円、御希望の方へ抽籖で配分しますから三月十三日午前十時までに役場配給係まで申込み下さい。

 これら義捐物資は水害発生直後の十七日にいち早く設置された災害対策本部へ、日本赤十字社、埼玉軍政部などから寄せられたのをはじめ、各地の個人や団体からも見舞金、救助物資、見舞状が続々と寄せられた。たとえば愛知県蒲郡町役場から瀬戸物、静岡県田方郡江間中学校から学用品、南埼玉郡新和村農業会から救助袋、北足立郡大門村青年団から甘薯、比企郡宮前村から野菜、などが送られてきた。また戦時中桜井地区へその子供を疎開させていた東京都佐久間小学校の父兄有志や、同じく今川小学校後援会・PTAからも見舞金が寄せられた。

 こうして生活物資を中心とした救援活動に続き、防疫のための予防注射や病人用のミルク・かゆ米の特配なども行われた。とくに何日間も汚濁水の中につかっていた堀抜井戸の多い地域では、赤痢や腸チフス等の発生とその流行が憂慮された。このため、水害発生の約一週間後に、部落単位で被災者全員に対し予防注射が強制的に実施され、予防注射証明のない者は旅行、外出を厳しく取締られた。この防疫措置により新方地区向畑で発生をみた赤痢も、大流行することなく終息させることができた。