埼葛町村会

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埼葛地域町村長が、戦前から組織していた埼葛町村長会は、昭和二十二年六月「地方制度の画期的大改正に伴ひ、左記に依り系統町村長会を改組し、これを母体として地方自治法第二九八条に基づく町村協議会を設置」するとして、町村長会の改組を宣言した。このなかの自治法第二九八条とは、

  普通地方公共団体は、一定の地域の綜合的な開発計画に基づく次の各号に掲げる事業で、当該普通地方公共団体の事務に属するものを、綜合的に実施するため、他の普通地方公共団体と共同してこれらの事業の実施を委託すべき地方開発事業団を設けることができる。

と規定したもので、この事業内容は、「住宅・工業用水道・道路・港湾・水道・下水道・公園緑地・その他政令で定める施設の建設」となっている。すなわちこの法令は、各町村間における広域行政機関として、地方開発事業団の設置を認めたもので、たとえば「越谷松伏水道企業団」「東部清掃組合」などがこれにあたる。

 ともかくこれは地方自治権の拡大とその自主性を認めた大きな改革項目の一つであり、地域各町村長会ではこの法令に基づき、旧組織を母体として新しい性格の会を発足させたのである。新旧両町村会の違いをその規約によってみると、旧町村長会の場合は、「本会ハ町村自治ニ関スル事務ノ改善発達ヲ図リ、併セテ町村相互事務ノ連絡ヲ期スルヲ以テ目的」としており、この目的達成のため、

(1)地方行政事務ニ関スル協議会ヲ開催スルコト

(2)優良町村吏員ヲ表彰スルコト

(3)県内外行政事務視察ヲ為スコト

(4)地方事務ニ関スル講習会ヲ開催スルコト

(5)町村事務ニ関シ、其ノ筋ノ諮問ニ答ヘ又ハ意見ヲ上申スルコト

となっている。これに対し新しい町村会の場合は、「本会は地方公共事務の円滑運営と、地方自治の振興発展を図ることを」目的としており、このための事業として

(1)町村の事務及び町村長の権限に属す事務の連絡調整

(2)法律又は政令により、本会の権限に属する国、地方、公共団体の事務の処理

(3)地方自治の振興発展に関する調査研究

(4)町村職員並びに福利厚生に関する施設

(5)系統町村との連絡並びに協力

などとなっている。つまり従来の町村長会は、権限のいちじるしく制約されていた地方自治制度のもとに、議決権のない上意下達もしくは諮問の機関、あるいは町村相互の連絡機関に過ぎなかったが、新設の町村会は、独自の事実を推進していくための議決機関として本質的な変化を遂げたといえよう。

 なお埼葛町村会は、埼玉全県下の地域町村会で組織された埼玉町村会の下部組織であったが、埼玉町村会は同年十一月、新しい町村会を結集するため、浦和市の埼玉会館で最後の埼玉町村長会を開催した。このときの協議事項は、

(1)埼玉県町村会設置につき、埼玉県町村長会解散の件

(2)埼玉県町村会長以下役員決定の件

(3)全国町村会の組織に参加の件

などであり、この決定に基づき埼玉町村会は同月全国町村会組織に加入している。このほかの協議事項では、

(1)電源并に電力調整につき政府に建議するの件

(2)新制中学校舎設備補助金を増額せられたきこと

(3)恒久的水害対策を樹立せられたきこと

という政府に対する要望決議を採択し、さらに次のごとき「治山治水に関する」陳情書を政府に提出することをきめた。

  政府は今次関東及東北における大水害の惨禍に鑑み、全国に亘る治山治水に関する根本国策を確立し、現に実施中及び今後企画せられる農地の拡張、林地の開墾、植林造林施設、河川堤防の修築等の諸施設、及びこれが予算化は、総てこの根本策より検討し、以て国民経済の安定と国土保全の百年の計を樹つるに遺憾なきを期せられたい。

もはや町村会は、上意下達の機関ではないことを明確に示したものといえよう。