自治体警察の発足

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昭和二十二年九月十六日、連合軍総司令部は、日本における警察制度の改革を指令した。この改革は地方警察を中央政府から分離独立させ、市・町長が、市・町議会の同意を得て任命する公安委員会にその管掌をゆだねようとするもので、明治以来の警察制度を根本から変えるほどの内容をもつものであった。これはいわゆる「自治警」と称された自治体警察制度であるが、総司令部は政府に対し、自治体警察設置に必要な法律を速やかに制定した後、九〇日以内にこれを実施させるよう指示した。

 こうして二十二年十二月十七日、新しい警察法が公布されたが、新警察法の施行日をひかえ、越ヶ谷・大沢両町は、二十三年三月七日越ヶ谷・大沢警察組合規約を設け、両町合体の自治体警察「越ヶ谷・大沢警察署」を設置した。このとき定められた組合規約の主なものを掲げると、

(1)組合は、組合立による自治体警察の設置及び維持に関する事務を共同処理する。

(2)組合会議員の員数は八名と定め、町会議員中の互選によって両町各四名を選出する。

(3)組合の管理者は、組合会議に於て越ヶ谷・大沢両町長中より選出する。

(4)管理者は、組合の円滑なる運営を期すため、副管理者と緊密なる連絡合議のうえ、職務を執行し共同で責任を負うものとする。

(5)組合公安委員の選出は、初年度越ヶ谷町二名、大沢町一名とし、年次交互に二対一の比率をもって繰返すものとする。

とあり、両町による組合立警察運営の基本が示されたが、このときは越ヶ谷町長が管理者となった。

 では自治体警察と国家警察の具体的な違いはどこにあったろうか。もちろん自治体警察職員の俸給は、所属した自治体から支給されたが、このほか「警察署処務要則」によると、署長は私事・旅行・休暇そのほか欠勤するときは公安委員会の承認を必要とする。署長退職の場合は、七日以内に後任者と事務引継を行ない、連署のうえ公安委員会に届出るなどの条項があり、さらに越ヶ谷・大沢警察組合条例によると、

(1)警察長(署長)の懲戒処分は、公安委員会がこれを行なう。

(2)警察職員は、法令・条例または公安委員会の定める事由による場合でなければ、その意に反して降任・休職または免職されない。

(3)警察職員の免職は、公安委員会の承認を経て警察長がこれを行なう。

(4)警察職員は、日本国憲法・法令・条例及び規則に従ひ、かつ公安委員会の定める服務の事項を忠実に守らねばならない。

などとなっており、署長の権限がいちじるしく制約されていたばかりか、人事に関する事柄も地方自治体の民間人に掌握されるという、戦前には予想もできなかった画期的な制度となっていた。かくて越ヶ谷・大沢警察署には、署長一名、巡査部長三名、巡査一一名、通訳・小使・婦人警吏の雇員三名、計一八名が配置された。