農業生産

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ついで、この時期の越谷農村を経済構造の面からのべてみよう。第32表は種類別・年度別の耕作面積および収量であるが、まず耕作面積では圧倒的に水稲・大麦・小麦が大きな割合を占めており、水稲耕作面積は漸増、大・小麦は減少傾向を示している。しかし、ほうれん草、葱、漬菜などの軟弱野菜は小面積でほぼ横ばい傾向である。なす、きゅうりなども増えていない。生産量は年によって、風水害等により変動があるが、米については漸増傾向、大・小麦は減少、軟弱野菜は増大傾向がみられる。麦が減少傾向にあるとはいえ、全体として米麦中心の生産がなされているといえる。

第32表 種類別耕作面積と収量
区分 水稲 大麦 小麦 ほうれんそう ねぎ なす きゅうり
年次別 面積 生産量 面積 生産量 面積 生産量 面積 生産量 面積 生産量 面積 生産量 面積 生産量
千貫 千貫 千貫 千貫
昭和22年 30,765 38,764 6,500 13,000 5,200 5,720 150 30 800 160 530 79.5 250 250
23  30,767 63,995 6,300 12,600 5,100 6,120 152 30.4 800 320 540 108 260 260
24  30,765 64,607 6,200 14,260 4,800 7,680 146 29.2 780 390 535 96.3 260 312
25  30,765 65,222 5,500 12,650 4,600 7,360 143 31.5 780 390 550 93.5 270 270
26  30,766 67,593 5,400 15,120 4,300 8,600 140 30.8 760 304 560 100.8 280 308
27  30,781 67,226 4,100 11,072 4,250 8,925 140 35 760 380 540 97.2 290 348
28  31,350 44,611 3,760 10,152 3,620 7,240 150 36 750 375 520 88.4 300 330
29  31,356 64,653 3,450 8,970 2,820 6,204 152 35 770 308 520 83.2 310 372
30  32,973 72,541 3,250 8,450 2,410 4,820 153 36.7 780 296 540 97.2 320 352
31  32,887 70,707 3,135 7,838 2,000 4,000 154 37 800 304 560 106.4 330 330

 つぎに生産額、販売額の面をみよう(第33表)。

第33表 作目別生産額・販売額・白家消費額(単位 千円)
区分 普通作物部門 果樹部門 蔬菜部門 その他
年次 生産額 自家消費 販売額 生産額 自家消費 販売額 生産額 自家消費 販売額 生産額 自家消費 販売額
昭和 千円 千円 千円
22 41,633 18,768 22,885 8,000 500 7,500 47,739 9,550 38,189 55,600 6,000 49,600
23 288,402 126,684 161,718 9,000 540 8,460 56,140 11,228 34,832 73,555 6,600 66,955
24 354,814 158,929 186,885 9,300 560 8,740 64,376 12,875 51,501 97,600 9,800 87,800
25 436,853 201,427 235,426 10,000 1,000 9,000 88,315 17,663 70,652 117,200 11,720 95,480
26 588,204 269,964 318,240 11,900 1,190 10,710 99,527 19,905 80,422 135,500 13,600 121,900
27 620,338 286,537 333,801 11,500 700 10,800 104,301 20,860 83,441 182,950 18,300 164,650
28 481,116 217,656 263,460 11,900 800 11,100 108,604 21,720 86,884 202,100 20,210 181,890
29 692,615 326,046 366,569 11,500 700 10,800 105,405 21,081 84,324 239,500 23,950 215,550
30 868,612 417,813 450,799 17,500 1,100 16,400 107,507 21,515 85,992 258,450 25,840 232,610
 総生産額に占める割合(自家消費率 25=35.6%,30=37.3%,商品化率 25=64.4%,30=62.7%)
25 70.0 30.9 39.1 1.5 0.2 1.3 13.5 2.7 10.8 18.0 1.8 16.2
30 69.4 33.4 36.0 1.4 0.1 1.3 8.6 1.7 6.9 20.6 2.1 18.5
 販売総額に占める割合
25 57.3 2.2 17.2 23.3
30 57.4 2.1 10.9 29.6
 昭和25年を100としたときの生産額・販売額
30 198.8 191.5 175.0 182.2 121.2 121.8 220.5 355.2

 二十五~三十年の間、生産総額に占める割合で普通作物が七〇%前後を占め、ついで、その他(実は養鶏を中心とした畜産)二〇%前後、蔬菜一〇%前後という構成は大きく変動していない。農産物の商品化率は二十五年で六四・四%、三十年で六二・七%と約三分の二の農産物が販売されており、商業的農業の展開の深さを思わせるが、二十五年から三十年にかけては農家の自家需要の増大もあって若干低下している。販売総額に占める部門別割合をみると、普通作物部門がいずれも五七%台で過半数を制しており、ついでその他二三~三〇%弱、すなわち養鶏ののびがいちじるしいことが特徴的であり、蔬菜部門は一〇%台となっている。この五年間ののびでは普通作物部門が生産額、販売額とも約二倍、蔬菜部門一・二倍、その他が生産額で二・二倍、販売額で三・五倍と大きくのびている。ちなみにこの間の畜産ののびをみると第34表のごとくである。

第34表 飼育頭(羽)数の変化
区分 役用牛 乳用牛
年次別 飼養農家数 頭数 飼養農家数 頭数 飼養農家数 頭数 飼養農家数 頭数 飼養農家数 羽数
昭和
27 840 840 700 700 95 280 48 50 3,100 100,000
28 780 780 650 650 100 300 64 70 3,150 132,000
29 710 710 712 712 120 350 88 106 3,200 145,000
30 693 693 560 560 165 500 95 109 3,250 172,000
31 229 229 775 775 208 691 96 109 3,300 180,000

 このうち養鶏をみると飼養農家が漸増し、三十一年時点では越谷の農家戸数の約八割が養鶏をおこなっていたことになる。また飼養羽数は二十七年から三十一年の四年間に八〇%の増大をみせ、この間一戸当りの飼養羽数も三二羽から五五羽近くに増加している。このほか養豚や乳牛ののびもいちじるしい。

 全体として、この時期の越谷の農業生産は、大・小麦の生産は減少傾向にあったとはいえまだ米麦が中心作物として大きな比重を占めていたが、養豚や乳牛などの畜産が急速なのびをみせようとしていた。しかし蔬菜部門はまだ小さく、農業生産に大きな位置を占めるまでにはいたらなかったといえよう。