農家経済の変化

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次に越谷の生産状況のうえからみた当時における農業の占める位置、ならびに住民の就業構造はどのようなものであったろうか。まず産業別就業人口の構成をみると、第35表にみられるごとく、農業を中心とした第一次産業は、二十五年から三十年の五年間に、六五・一%から五七・二%に低下し、実数で八九四人の減少をみせている。ついで商業・金融業などの第三次産業は二〇・七%から二三%へと二・三%上昇し実数にして七二八人の増加、このときはまだ割合の小さい製造業の第二次産業は、それでも一四・二%から一挙に一八・八%を示して四・六%、実数にして一一二二人ともっとも大きい増加をみせている。もちろんこの数字は、農家の兼業、あるいは農家その他から他都市への通勤就業を含めたものであるが、すでに農業以外の産業に進出する傾向が示されている。

第35表 産業別就業人口
年次 第1次産業 第2次産業 第3次産業
昭和
25 12,764 65.1 2,781 14.2 4,051 20.7
30 11,870 57.2 3,903 18.8 4,779 23.0

 また越谷地域全体の産業別生産額は、第36表のごとくであるが、二十五年度の農業生産額は製造業とほぼ同額であったが、三十年には大きくこれを引離している。しかし就業別一人当りの所得額は第37表にみられるごとく、農業所得が年間四万四〇〇〇余円でもっとも低く、サービス業の一六万六〇〇〇余円、卸・小売業の八万一〇〇〇余円にはるか及ばない。農業からの離脱傾向が強まってくる一つの条件がここにでているとみても大きな間違いはなかろう。

第36表 産業別生産額
年次 第1次産業 第2次産業 総計
25年 652,523 658,358 1,310,881
30年 1,252,399 714,485 1,966,844
同割合 (%)
25年 49.7 50.3 100.0
30年 63.6 36.4 100.0

(単位 千円)

第37表 就業人口1人当り所得額
年度 27年 30年 増減
農業 44,020 49,949 5,929
建設業 75,000 83,000 8,000
製造業 48,213 53,031 4,818
卸売および小売業 81,865 77,590 △ 4,275
サービス業 166,830 192,580 25,750

(円)

 さらにこの傾向を第38表の農家の就業構造からみてみると、越谷地域農家の戸数四一五七戸のうち、二十五年度の専業農家は二九三二戸を数えたが、三十年度には二六四四戸と二八八戸が減少し、かわって農業生計を主とした第一種兼業が九九二戸と二九一戸の増加をみせている。なおこの時期には農業以外の産業によって生計を営む第二種兼業農家はそれほどの増加を示していない。しかし離農現象は目立たなかったとはいえ、すでに専業から第一種兼業へ、第一種兼業から第二種兼業へ移ろうとする階層分化の様相が顕著にあらわれだしていたことが知れる。またこの階層分化の傾向を、経営耕地の規模からみると、たとえばこの間〇・五ヘクタール(約五反)から一・五ヘクタール(約一町五反一畝)を耕作する中堅農家が減少し、〇・五ヘクタール未満の零細農と、一・五から二ヘクタール耕作の、比較的土地所有の大きな農家が増大していたことからもこれを窺うことができる。こうしたなかで、農業経営のうえでは、第39表のごとくまだ雇傭・被雇傭の関係が大きかったことが知れるが、全体として他産業への労働市場がこの時点では十分に開かれていなかったことを示しているといえよう。

第38表 専業・兼業別割合
年度 戸数 専業 第1種兼業 第2種兼業
25年 4,157 2,932 701 524
30年 4,179 2,644 992 543
第39表 農業内被雇用者の状況
区分 年傭 季節傭 日雇
経営面積別 雇傭世帯数 被雇人員 雇傭世帯数 被雇人員 被傭延日数 雇傭世帯数 被雇人員
5反未満
5反~1町 20 20 6 12 240 100 200
1町~1.5町 50 52 12 24 480 300 600
1.5町~2町 2 2 3 4 250 200 400
2町以上
72 74 20 40 970 600 1,200

(昭和30年)