埼玉県ではこれに先だち、二十六年、政府の町村合併促進運動の推進策に対応し、「町村規模の必要性および標準」と題したパンフレットを県下各市町村に配付していた。これによると、町村の合理的な規模は、人口で少なくとも八〇〇〇人程度、面積は比較的小さい程よいが、最大限四〇平方キロメートル程度が望ましい。ただしその地域の地形や交通・産業・経済・住民意織などの有機的な諸条件を考慮したうえで合併を決定する必要があると、その標準を示した。
かくて二十七年「埼玉県町村規模適正促進委員会」が設置され、町村合併の具体的な推進に積極的な活動がはじめられた。ついで二十八年十月一日、町村合併促進法が施行されるにともない、埼玉県でも促進法第四条に基づき、改めて「埼玉県町村合併促進審議会」が設けられ、町村合併の実施活動に入った。この審議会の規定によると、同会の権限は「条例で定める職務を行なうため必要があるときは、市町村規模の実態について調査し、及び県職員の説明を求め、並びに町村合併促進に関する事項について知事に意見を述べることができる」となっており、委員は三九人以内をもって構成されることになっていた。なお委員は「左の各号に掲げる者のうちから、当該各号に規定する数以内において、知事が任命する」として
(1)埼玉県町村会が郡の区域ごとに推薦する当該郡の区域内の町村の長九人
(2)埼玉県市長会が推薦する県の区域内の市の長一人
(3)埼玉県町村議会議長が、郡の区域ごとに推薦する当該郡の区域内の町村の議会の議長九人
(4)埼玉県市議会が推薦する県の区域内の市の議会の議長一人
(5)埼玉県議会が推薦する県議会の議員一〇人
(6)埼玉県教育委員会が推薦する当該教育委員会の委員一人
(7)埼玉県の職員三人
(8)学識経験者五人
という構成であった。このうち町村議会議長の推薦した委員のなかに、越ヶ谷町議会議長の近藤正己、埼玉県議会の推薦した委員のなかに、越ヶ谷町の荒井政太郎が含まれていた。
一方各地区ごとのレベルで、町村合併推進のための機関が設けられたが、埼葛地区においては同年十一月、「従来の弱小町村の規模の適正合理化を図り、地方自治体の健全なる基盤を確立」するとの趣旨に基づき、埼葛地区町村長を委員とした「埼葛地区町村合併推進協議会」が結成された。この協議会の機能は、町村合併に関する必要な調査や、新町村建設計画の策定、その他合併に関する協議を行なう機関であった。こうして町村の合併が強力に進められたが、二十九年四月現在、埼玉県の合併成績は、一二ヵ町村が四ヵ町村に統合され、八ヵ町村が減少したにとどまった。しかしその後急速に町村の合併が進行した。