そして同年九月、町議会で市制施行申請書を議決するとともに、申請書ならびにその関係書類を県に提出した。この施行申請書によると、市制を必要とする理由として、

（1）住民に清新発展の気分を与えると同時に近代的自治意欲をたかめ、産業・経済・交通・文化・教育の発達並びに行政能率の向上等が図られ、住民の福祉に寄与するところ大なるものがある。

（2）越谷町はその地勢や交通上首都衛生都市として目ざましい発展を示し、東武鉄道蒲生駅東側新国道沿い、及び北越谷駅西口に県営住宅さらに越谷駅西口に東武鉄道による集団住宅の建設が促進される。また出羽地区土地改良事業の完成に伴い、住宅建設の気運が醸成されるとともに、新国道舗装工事完成により交通量は増大し新国道沿いに大工場や住宅の建設がとみに増加しつつあり、将来の発展が約束される。

（3）周辺農村部は、埼玉県農業試験場の指導により、農業技術は向上し、蔬菜の促成栽培の普及をみ、またフレームによる花卉栽培等により農業経営の改善がはかられるとともに大小企業の発達により、次男三男の就職と独立は促進され、農村経済の安定を指標として、市制の施行は大きく期待される。

（4）越谷町は四号国道及び東武鉄道の沿線にあり、バスによるも鉄道によるも、いづれも三〇分ほどで東京都心に到達する交通至便の位置にある。近く東武バスの越谷・安行間を、川口駅に延長、更に越谷・池袋線の新設、及び東京・那須間急行バス越谷経由の計画あり、なお地下鉄道の北越谷駅迄昭和三十五年度において延長が予定され、完全なる都市計画と上水道の拡張普及と、簡易水道の完成により、真の近代的自治体が建設され、市街地及び農村部の発展もとみに期待される。したがって完全な自治体として諸施設を建設するためにも市制を必要とする。

とある。

　市制施行直前の越谷町の町勢は面積六〇・三九平方粁、戸数は八三九〇戸、人口は四万八三一八人、このうち中心市街地連続戸数が五五〇二戸、人口二万九〇〇六戸で、総人口に対する比率は六〇・〇三％、商工業その地都市的業態の住民は五五三二戸、二万九一二六人で、いづれも法律で定められた市の資格を備えているとしている。

　また社会施設等の現勢は、第1表のごとくであり、保育所が三ヵ所、公益質屋・授産所各一ヵ所、資本金五〇〇万円以上の会社・工場一八ヵ所、従業員三〇人以上の会社・工場一一ヵ所、営業用自家用合せた自動車保有量が九三九台、映画館が三ヵ所、越谷駅等四ヵ駅を合せた一日平均の乗降客が八七〇三人、バス一一路線を合せた一日平均乗降客が九八六七人、生産額は工業農業合せて年額二一億一四三二万一二〇〇円、このほか電話の加入者数は当時事務所用五二四台、住宅用三一台計五五五台、ラジオの聴取者数は七三一四戸、テレビの聴視者数が五一三戸となっている。そして昭和三十年度四万六四七六人であった越谷町の人口は、三十三年までに一五七二人増加して四万八〇四八人であり、昭和五十年度の予測人口は第2表のごとく八万人を適当としている（現実は一九万人）。