農産物販売金額別の農家数を第19表によってみると、一戸当り平均金額は三十五年の一八・八万円から、四十年には七七万円に急上昇している。これは、米から畜産・野菜への変化に対応するもので、商品生産への移行が急速にすすんでいることを示す。この間、一〇〇万円以上の販売高をもつ農家は一〇〇戸以上増大している。次の五年間になると、販売高五〇〇万円以上の農家が一八戸もあらわれている。
なし | 3万円未満 | 5~10万円 | 10~20万 | 20~30万 | 30~50万 | 50~70万 | |
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35 | 538 | 758 | 698 | 1,075 | 586 | 324 | 69 |
40 | 560 | 292 | 551 | 603 | 607 | 605 | 317 |
45 | 624 | 316 | 678 | 796 | 441 | ||
70~100万 | 100~150万 | 150~200万 | 200~300万 | 300~500万 | 500万以上 | ||
35 | 24 | 51 | |||||
40 | 103 | 165 | |||||
45 | 319 | 149 | 37 | 24 | 14 | 18 |
四十一年時点で現金収入額の収入源をみると、収入が大きい経営ほど、畜産、野菜の比重がたかい。逆に、現金収入五〇万円以下の農家では、米の比率がきわめて高い。とくに一〇~三〇万円層の未収入は農業収入の九五%をしめている。稲作の技術向上による省力化によって、投下労働量が減少し、〝二ちゃん農業〟〝休日農業〟など、農業が家計補助的役割をはたす位置になっていることを示すといえよう。逆に上層農は、しだいに高度集約的部門に重点をうつしていることがわかる。そのいくつかの事例を拾うと、たとえば四十五年四月十三日付の新聞では〝水稲より花栽培を、越谷市が作付転換を奨励〟との見出しで、
激しい都市化のなかで、人口三十万人の住宅田園都市づくりを目標にしている越谷市は、このほど人口増にともなう農業基本政策を作成、大幅な作物転換を呼びかけている。従来の水稲経営農業から、園芸を主とした近代都市農業への脱皮、(中略)しかも新都市計画法の線引きで、農地千百七十二ヘクタールが市街化区域に指定され、道路や学校、公園などに四百ヘクタールがつぶされ、水田は千五百ヘクタール、畑四百八十九ヘクタールと、全市の三三%に減少、耕地面積の少なくてすむ花などの施設園芸に目下切替え中。
とこれを報じている。また四十六年十月四日付の新聞には〝八〇農家が集団転作、越谷、稲作あきらめそ菜へ〟との見出しで、
米どころ越谷市で、稲作に見切りをつけた農家が、集団でそ菜栽培に転換する。水田転換促進対策事業として国や県の助成を受けて行なうものだが、市営で行なう転作事業は県下でははじめてのケース。同市増林、中島の農家八十世帯が、水田十四ヘクタールを畑地に転換し、スプリンクラーや排水路を整備して特産のネギをはじめカリフラワ、レタスなどの洋菜を栽培、一〇アールあたり稲作の三倍強にあたる年間十八万円の収益をあげようというもの。(中略)この計画は今月下旬から工事に着手、四十八年三月末までに全工事を終了の予定、三、四軒の農家が共同で稲作転換した例はあるが、百軒に近い農家がこぞってそ菜栽培に転換するのは県下で初めて。
と、集団による蔬菜栽培の転換を報じている。これらは都市化の進展に対応した新しい農業経営の動きといえる。