その他の公害

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しかし公害を発生させるのは、決して工場ばかりではなかった。高度成長下で急激に増大した自動車交通による排気ガスや、宅地急造によるゴミ処理の立遅れから起きるゴミの不法投棄、あるいは農地をつぶしたままの空地の雑草繁茂、さらに畜産、とくに養鶏などの悪臭が、住民生活を脅かす公害として一挙に表面に出てきた。

 交通公害では、すでに三十七年、国道四号線を通行する自動車の排気ガスやその震動から、蒲生の道路沿いの生垣が枯れるという事態が発生している。

 ゴミの不法投棄では、これを四十五年五月の新聞報道でみると、〝川は泣いている〟との見出しで、「越谷市内には、一級河川の元荒川をはじめ、綾瀬川・葛西用水・新方領悪水路、逆川・末田大用排水・四ヵ村用水などの大小河川がある。水郷越谷といわれ、かつての情緒も、急ピッチな都市化のため、悪臭を放つドブ川と変り果て、特に同市大沢四丁目の葛西用水取入口は、心ない市民たちが捨てたゴミで水面も隠れるほど、上流で投捨てた木片・ビニール・ダンボール・野菜クズ、時にはドラムカンなどが橋脚にひっかかっている」と、ゴミの不法投棄による川の汚れを報じている。

 養鶏公害については、同じく四十五年五月の新聞報道によってこれをみると、〝養鶏公害追放を〟との見出しで、

  越谷市は養鶏公害を一掃するため、今年度から鶏フン乾燥機に脱臭装置を取付ける九軒に補助金を支出する。これは同市の養鶏が、都市養鶏のため、都市化にともない公害がふえ、住民の苦情が高まったことから。同市農務課の調べだと、同市の養鶏は二百七十五軒、六十五万羽、年間十四万トン、一億四千五百五十万個の卵を出荷、日本一と自負している。ところが公害もふえるため、市は三十七年市街地環境衛生協力会を結成、薬剤散布による蚊とハエの駆除や鶏フン処理の近代化を進めるとともに、養鶏場の廃棄や移転を行った。また三年前、国の補助事業による〝養鶏団地〟を計画、郊外に十九万平方メートルの敷地を確保、市街地の養鶏場移転を計画した。しかし地元から猛反対されたため、鶏フン乾燥機から出る煙を、地中に送り込み、農機式排水ガス脱臭装置の設置奨励を決めた。

と、この間の事情を報じていた。

 また農地を宅地に転用したまま、空閑地として放置している地所が増大したが、手入れしないため雑草が繁茂し、あるいはゴミ捨場となって蚊や蝿の発生源となった。このため市では四十四年に草刈り条例を設けて雑草の刈り取りを義務づけたが、地主が不明であったり草刈人の不足から、あまり効果があがらなかったようである。

 以上みてきたように、騒音・悪臭・汚水・ばい煙・振動などの公害は、地域的局地的なものであっただけに、その原因をつきとめ市当局や住民が一体となってその排除につとめることができた。しかしその後大気の汚染による光化学スモックが越谷地域にも広く襲ってくるようになった。これはその発生源が特定の工場や特定の自動車交通によるものでないだけに、その対策の立てようがなく、今後の大きな問題として残されるであろう。