戦後復興期の越谷商業

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それでは戦後復興期から高度成長期にかかる間の、まだ旧来の俤をとどめていた越谷商業を概観しておこう。

 第26表は二十五年と三十年の産業別就業人口構成である。これによると二十五年では二〇・七%、三十年では二四・〇%が第三次産業に従事しており、圧倒的多数は農業など第一次産業である。第三次産業就業者中、卸売・小売業、サービス業に従事しているものは、二十五年で二八〇八人、三十年で三五五七人であり、それぞれ、全就業人口の一四・三%、一七・三%を占めている。この五年間で相当な伸びがみられる。しかし表には現わさなかったが、四十三年の就業別人口構成では、第一次産業が一一・一%と大きく低落を示し、これにかわり工業などの第二次産業が四二・七%、第三次産業が四六・二%と上昇している。この間の変化がいかに大きく、またいかに急速に農村から都市に変貌していったかを窺うことができる。また二十五年の時点で、商業サービス業の地域的割合をみると第27表のごとくである。すなわち越ヶ谷・大沢が三〇%台、ついで蒲生の一八%台、その他の地域は一〇%以下であるが、ことに川柳・出羽・荻島の各地域は七%台にとどまっている。また昭和三十年現在の市域における業種別構成をみると、第28表のごとく飲食店その他と菓子販売が圧倒的に多いのが目につく程度で、大筋では農村的商業構成であったといえる。

第26表 産業別就業人口構成
昭和25年 昭和30年
就業人口 同割合 就業人口 同割合
第1次産業 12,764 65.1 11,870 57.2
第2次 〃 2,781 14.2 3,396 16.4
第3次 〃 4,051 20.7 4,979 24.0
うち卸売,小売業
  サービス業
1,773 14.3 2,157 17.3
1,035 1,440
19,596 100.0 20,752 100.0
第27表 産業別世帯数
総世帯数に占める商業・サービス業の割合(25年)
a 世帯総数 b 卸売業および小売業 c サービス業 b+c/a
桜井 509 27 14 8.1
新方 427 15 20 8.2
増林 751 42 33 10.0
大袋 616 36 16 8.4
荻島 542 27 15 7.7
出羽 613 26 21 7.7
蒲生 753 87 49 18.1
川柳 563 21 20 7.3
大相模 665 40 26 10.0
越ヶ谷 1,534 373 168 33.3
大沢 1,088 232 97 30.2

但し,b,Cについては世帯主の職業を示す

第28表 業種別構成
業種 軒数
飲食店その他 133
菓子販売 121
酒類 〃 44
食料品 〃 42
理髪美容 33
自転車 28
金物廃物 27
青果物商 25
洋品販売 22
鮮魚 〃 19
呉服 〃 14
家具建具 〃 13
医薬化粧品 12
電気器具 14
燃料販売 9
パーマネント 9
せんべい加工 8
洗張洗濯 7
染物 5
たたみ 6
時計 5
旅館 4
鍛冶屋 4
写真 3
セトモノ 3
食肉類 10
260

(30年4月)

 ついで、こうした商業の経営規模では、平均で一商店あたり就業者数は二・四人、一日売上げ高二一・一万円(県平均三四・七万円)であり、就業者四人以下の商店数が全体の九二%を占め、全体的にはその経営規模は小さく、平均すれば店員二人位、店舗の面積は一〇坪程度の零細経営が圧倒的であった(第29表)。

第29表 商業の業種別構成および販売高
商店数
(戸)
就業者数
(人)
1商店あたり就業者数
(人)
月間総売上げ高
(千円)
1商店あたり平均販売額
(千円)
同左県平均
(千円)
一般卸売業 13(2.0) 95 7.3 8,101 623 1,756
各種商品小売業 266(40.5) 355 1.3 16,202 60
専門品小売業 289(44.1) 764 3.3 64,498 223 265
製造小売業 28(4.3) 60 2.1 31,382 1,120
飲食業 60(9.1) 161 2.6 18,519 308
656(100.0) 1,635 2.4 138,702 211 347

昭和31年7月1日

 こうした越谷の商業が地域住民の購買の多くを吸収しえたかといえば、必ずしもそうではない。東京に近接しているため多くの消費者は都内の影響をつよくうけて、流行に敏感であったため、交通の利便さから、東京に出たついでに買い物をするという傾向は相当はやくからあったようである。

 かくて越谷の商業は町村合併以後とりわけ、都市化の進展とともに急速に変化してゆくことになった。