越谷商業の変化

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昭和二十九年十一月、越ヶ谷町をはじめ二町八ヶ村が合併して越谷町が誕生したのを機会に、それまで各町村毎に設けられていた商工会は翌三十年三月に合併し、越谷町商工会を結成した。ここには越ヶ谷、大沢、蒲生を中心として五六九商工業者が結集した。商工会の方針としてはサービスの改善、店舗の改善、店員の教育、経営の合理化をはかるため講習会の開催などに力を注ぐ、と同時に商店どうしの横の連絡や町当局との連絡を密にし、観光宣伝にもつとめる。また、市街地を明るくして客を呼ぶため、ネオン灯を設け、近代的な商店街をつくるなどを決めていた。

 なお二十九年の『新町建設計画』によれば、商業振興計画として、商業機構整備計画と、商業経営改善計画の二計画をかかげ、前者では商工会の活動の拡大・強化、部会(企画部、教養部、販売宣伝部、研究部など六部)の設置などとともに百貨店、生協購買会などの進出に対する小売店の対策をすでにかかげている。後者では商店、商店街の美化計画として、ウィンドー装飾競技会などの開催やネオン灯、アーチ灯の計画的設置をあげている。

 当時、人びとは、越谷の商店街を、どのようにみていたであろうか。三十二年四月六日付の新聞報道が、この間の事情を端的に報じている。すなわち『昔ながらの眠った町、越谷商店街、ようやく一部に近代化の芽ばえ』との見出しで

  十年一日といってもよいほど変りばえのない町である。商店街もその通りで、県商工会の商店診断に、優良店として異色を認められたのはたった一軒、農家相手に昔ながらの商法を守ってわずかに体面を維持している。わずかに変ったといえば、昨年からネオン灯がついたが、まばらなためさっぱり効果が上らない、きき目があるといえば、約三十軒の新進業者?が、〝黄色い旗の店〟を結成して飛行機を使った空からの宣伝、観劇旅行などの特別サービスを行ない案外人気をえて、眠った商法からやや近代化された方向に進んでいる。

  電車で都内へ三十分と、交通機関が発達しているため、どうしても客足は都内に吸収されがちである。町商工会でもこれに対抗する積極戦法は取らず、各商店の自主運営にゆだねている有様、この商店街に毎月二、七の日〝市〟が立つ、衣類・雑貨物などと雑多だが、農閑期ともなれば農村の人々でにぎわい、特にこれからの〝苗木市〟は、農家のお客を相手に売る景気のよい掛声が、昔ながらのふん囲気を出している。

とある。商工会の対策も東京に近接している越谷にあっては、十分に消費者の購買意欲をおこさせる対応にはなっていない。逆に、東京通勤圏としての労働力市場のひろがり、「高度成長」による労働力需要の増大の中で、三十年代には店員の確保も次第に難しくなり、店員の待遇改善も急務となり、三十三年には週休制にふみきっている。

 第30・31表は三十五年以後各年毎の商業の推移である。これによると、三十七、八年以後の急速な変化がわかる。まず、商店数の増加をみると三十五~三十七年では商店の増加数が一三軒であったのに、三十七~三十九年では一四七軒、三十九~四十一年では最も多く三七九軒増加し、以後三〇〇軒前後づつ増加している。業種別にみると、その圧倒的多数が小売業で、ついで飲食業である。こうして三十七年からの一〇年間で総商店数では実に二・八倍に増加し、数の上では三十七年までに存在した商店は四十七年では七軒に一軒の割合にまで減少している。増加した多くはほとんど外部からの資本とみてさしつかえなかろう。

第30表 商業の推移
商店の種類別数 従業者数 年間商品販売額(千円)
仲立 小売 飲食 卸小売店 飲食店 卸小売店 飲食店
昭和35年 91 3 663 69 826 1,995 196 2,191 3,131,936 79,733 3,211,669
37  92 3 667 77 839 2,068 261 2,329 5,112,930 159,650 5,272,580
39  114 2 766 104 986 2,612 386 2,998 8,206,094 279,540 8,485,634
41  177 2 1,015 171 1,365 3,595 573 4,168 20,060,900 524,050 20,584,950
43  143 0 1,242 264 1,649 4,251 881 5,132 22,148,310 859,200 23,007,510
45  172 1 1,460 347 1,980 5,304 1,231 6,625 36,873,340 1,722,430 38,595,770
47  184 0 1,661 468 2,313 6,352 1,745 8,097 56,321,050 2,694,060 59,015,110

各年7月1日現在

第31表 商店数の増減状況
仲立 小売 飲食
35~37 1 4 8 13
37~39 22 △2 99 27 147
39~41 63 249 67 379
41~43 △34 △2 237 93 284
43~45 29 1 218 83 331
45~47 12 △1 201 121 333

△は減

 一商店あたりの従業員数は卸売・小売業で三十五年の二・六人から四十七年の三・四人と〇・八人増加し、飲食店では二・八人から三・七人へと〇・九人増加し、全体として一人約の増加がみられる。従業員数全体としては、三十七年からの一〇年間で三・五倍に増大している。