編さん委員長 浅井堅教
通巻全六巻の『越谷市史』は、今回刊行された通史(下)をもって一応の完結をみた。昭和四十三年越谷市史編さんの事業に着手して以来、思えば今日まで永い歳月の経過であったが、また短い年月でもあったかのような複雑な感じである。この間越谷は都市化の進展で大きな変貌を遂げたが、同時に越谷市史編さん事業も発展と充実の道を歩み続けた。多少の困難な問題がないではなかったが、そのつど編さん関係者は協力して問題を解決してくれた。今になって顧りみると、おおむね順調な経過を辿ってきたといえよう。ことに市史編さんの実務を担当した監修者はじめ、各編集員及び事務当局のご努力に対し、ここに改めて敬意と感謝を表する次第である。
こうして越谷市史の編さんは無事に終りを迎えることができたが、この事業そのものが、越谷市の市民に直ちに大きな貢献をもたらせたとは言えないまでも、今まで不明であった越谷の歴史事象を少しでも明らかにしたという画期的ともいうべき文化的な業績を果したのは事実である。そして将来この事業の成果がなんらかの形で承け継がれ、越谷文化の一翼を負う重要な機関に発展することを期待したい。
それは、この編さん事業を進めるに当って収集された諸資料が、近世古文書や近現代行政文書をはじめ、絵図・公図・公印・古写真・新聞・雑誌・参考文献など、その数量は決して少なくない。市史刊行完結後の作業としては、これら諸資料の整理とその保存措置にあるのはいうまでもないが、同時に資料の活用をはかる施策が重要である。市史全六巻は収集した諸資料のうちきわめて一部分の活用でしかなかったからである。したがって今後資料の活用を広くはかるための機能を具える文書館あるいは資料館の設置が強く望まれるからである。
最後に当市史編さん事業に対する大塚伴鹿氏以来の歴代市長の深いご理解と、編さん委員、編集員、ならびに市民各位の絶大なるご協力に対して、重ねて、心から御礼を申し上げる。
昭和五十二年三月