あとがき

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 都市化のはげしい越谷市の現状にかんがみ、歴史諸資料の散逸その他を憂慮した大塚伴鹿元市長は、昭和四十三年越谷市史編さん委員会設置条例を設け、市史編さん事業に着手した。編さんスタッフは当初編さん委員が委員長を含めて一四名(後一二名)、編集員が監修者を含め一二名(後一五名)、編さん室員が二名(後三名)をもって構成され、総務部庶務課の主管のもとに同年五月から活動が開始された。

 同年度は編さん委員会で討議採決された事業計画に基づき、鋭意歴史諸資料の収集に努めるとともに、路傍の石碑や石塔・鐘銘など金石文の一斉調査を実施、『越谷市金石資料集』を四十三年度の調査報告書として発刊した。

 第二年度、つまり昭和四十四年度は、重点施策として越谷市の民俗一斉調査を実施、同じく四十四年度の調査報告書として『越谷市民俗資料』を刊行した。ついで四十五年度は、各編集員の調査研究の成果を収録した『越谷市史研究報告』、それに収集諸史料のうち近世古文書の目録を収めた諸家別『越谷市近世古文書目録』の刊行をみた。

 四十六年度は、当初からの基本計画にしたがい、越谷市史本編の編集に着手、収集史料のうち近世の比較的まとまった記録類や御用留類など一〇編を収録した史料編『越谷市史四・史料二』を発刊した。引続き四十七年度は、近世以前の文書史料を分類別に編年して収録した『越谷市史三・史料一』さらに近現代行政文書を中心とした明治以降の資料目録『越谷市近現代資料目録』を調査報告書として、あわせて刊行することができた。

 ついで四十八年度は、本編のうち近代文書を分類別に編年収録した『越谷市史五・史料三』を、四十九年度は担当編集員によって、近世以前の歴史事象が叙述された一三〇〇〇頁余に及ぶ『越谷市史一・通史上』の発刊をみるに至った。また五十年度は、近代以降における歴史事象の叙述準備を前提に、近代史料の補遣と現代史料を収録した『越谷市史六・史料四』を同年度に発刊した。

 この間編さん事業の推進当事者である越谷市長は、四十五年十一月大塚伴鹿元市長から島村平市郎前市長に、四十八年十一月には黒田重晴現市長に移ったが、編さん事業は引続き各市長の理解のもとに継続された。そして五十二年三月、近現代の歴史事象が叙述された『越谷市史二・通史下』が発刊され、ここに越谷市史全六巻の刊行を無事に完結することができた。編さん事業を進めてから満九年、ここに編さん事業は一応の終了をみたわけである。

 ただし事業着手当初の基本計画では、五ヵ年の期間で史料編一巻、通史編二巻の市史を刊行して事業を終了させる予定であった。ところが当初の見込と異なり、予想以上の諸資料が収集できたため、史料編三巻の追加が決定され、編さん期間の延長が確認されるに至った。こうして市史の刊行は、その年度の基本計画に基づいておよそ順調な経過を辿ることができた。

 しかし一面市史の刊行準備に忙殺されて、収集資料の整理やその保存措置は今後に持ちこされることになった。ちなみに収集された近世史料は原文書・コピー文書、それに各大学研究所・史料館などでその所蔵が確認されている越谷関係文書を含めると約数万点、近現代史料では編さん室保管の役場文書や埼玉県立文書館所蔵の行政文書を中心に、諸家文書を含めると一万数千点にのぼる。このほか地引図・公図・絵図・新聞・雑誌・写真など厖大な数量に達する。

 今後はこれら諸資料の整理に努め一般の利用に供すとともに、さらに資料の収集を続け、その充実と活用をはかる措置を期待する声がきわめて強い。おそらくこの要望に応えて市史資料室の活動が今後とも続けられるであろう。

 かえりみれば光陰箭の如しというたとえにある通り、市史の編さんを進めてから早くも一〇年に迫ろうとしている。この間越谷は都市化の波によって大きく変貌し、現在もこくこくと変りつつある。おそらく将来の人びとにとって昔の越谷の面影は、想像もつかない歴史事象になっているであろう。こうした意味からも越谷市史全六巻が越谷のあゆみを記録したかけがえのない郷土の辞典として、永く、しかも広く活用されることを信じて疑わない。

 終りに市史の編さんにあたり、さまざまな困難とそれにともなう苦労を克服し、一致して事業の推進にご尽力戴いた監修者はじめ編集員の諸先生、ならびに史料のご提供を戴いた各家、それに各資料館・文書館・大学研究室に対し、紙上ながら厚く御礼申し上げます。また本書中明治・大正期の教育に関しては埼玉県立歴史資料館の小池信一氏にご協力をたまわりましたが、その他ご協力戴いた方々の氏名はその項目の末尾に掲げさせて戴きました。本当に有難うございました。また越谷市史全六巻の印刷を担当し、終始誠意をもってその発刊にご尽力戴いた山陽印刷有限会社に対し、改めて感謝申し上げます。なお本書の校正は主に編さん室の藤咲婦美子、原初男が当った。また本書の中に使用した写真中、越谷市役所広報課、ならびに教育委員会文化財係からの提供もあることを申し添えておきます。

        越谷市史編さん刊行物年次表

 昭和四十三年度 越谷市金石資料集

 同 四十四年度 越谷市民俗資料

 同 四十五年度 越谷市史研究報告

         越谷市近世古文書目録

 同 四十六年度 越谷市史四・史料二

 同 四十七年度 越谷市史三・史料一

 昭和四十七年度 越谷市近現代資料目録

 同 四十八年度 越谷市史五・史料三

 同 四十九年度 越谷市史一・通史上

 同 五十年度  越谷市史六・史料四

 同 五十一年度 越谷市史二・通史下

   昭和五十二年三月

市史編さん室