一右は延享元子八月中川岸畑江岩槻御領主永井伊賀

　　守様御蔵之由ニて郷蔵壱棟相建候ニ付、其段早速

　　御支配様江御訴申上御吟味ニも其時〻可相成処、

　　相手瓦曾根村名主彦左衛門病気ニ付日延仕罷有由

　　申伝候迄ニて願書無之候

　一右御支配柴村藤右衛門様ゟ舟橋安右衛門様江御支

　　配替りニも相成候趣ニ御座候ニ付、左之通り願書

　　差上候由延享三寅年御用書留帳控有之候

　　　乍恐以書付奉願上候

一西方村申上候私共村方溜井堤添畑七畝拾五歩之処、

瓦曾根村彦左衛門越石ニ所持仕罷有候地所江、子八

月中永井伊賀守様御蔵ニ有之由ニて拙者共方迄一円

沙汰不仕普請仕、我儘成致方ニ付其段御訴申上候、

御吟味可被仰付処相手方彦左衛門儀病気ニ付、近村

之儀故右大病之儀見届ヶ罷有候ニ付追て御願可申上、

段〻延引ニ致候処、当四月中彦左衛門儀病死仕、依

之無是悲延引仕候所、此度御支配替りニ付御願申上

候、御慈悲ニ右出入之儀乍恐御引渡し被成被下候様

奉願上候以上

延享三寅年六月　　　　　西方村

　　　　　　　　　　　　　名主　治郎左衛門

　　　　　　　　　　　　　年寄　喜右衛門

　　　　　　　　　　　　　同　　新右衛門

　　　　　　　　　　　　　百姓代吉左衛門

柴村藤右衛門様

　　　　　　　　　御役所

　　　右出入一件済方書物相見江不申

一延享三寅年亀有村御役宅大竹孫右衛門様江申立、則

御見分被遊候て瓦曾根村役人并紀州様御鳥見会田平

左衛門殿、亀有御役宅江被召出御吟味之上右場所は

御拳場内ニ相違無之候ニ付、早速取払候様被仰渡則

其砌り取払申候

右之通り西方村之心得迄ニて聢と其節証拠書物も無

之、既ニ天明六午年早〻御調有之節も右之通り申立

候得共、全相違無之候共疑惑可有之様ニ相聞候

　　　私之推量ニ曰

延享三寅年御代官替りニ付、船橋安右衛門様江出入

引渡御吟味之上ニて、一躰数年来瓦曾根村越石ニ所

持致し、殊ニ溜井廻り紀州様御場所とも相心得罷有

候故、人家と違物置ニ補理候聊之儀ニ候得は、西方

村ニて差障候儀有之間敷由、且又御代官様ニても郷

蔵とハ西方村申立候得共、聊成物置のみ之儀ニ候得

は西方瓦曾根同御支配所之儀故、夫〻御利解御下ヶ

ニも相成候事ニ哉相聞候、依之御拳場御掛り大竹孫

右衛門様へ又〻訴出申候哉、然ル処御鳥見様御取計

イニて相済候得共、済方之儀申渡のみニて、都て御

請書等御取置被成候様成急度致候儀は無之事故、何

ニても当時至証拠ニ可相成程の書物も有之間敷ト覚

候

一当時ニ至瓦曾根村心得方之儀は、一躰郷蔵之儀も岩

槻領主永井伊賀守様御年貢川岸積替之節、急雨等之

手当ニ、請方船主共補理置候事ニて、瓦曾根村ニて

差障り為取払致候儀ニて、西方村ゟ右察当有之故ニ

取崩候筋ニ無之様申紛罷有候