右は去四月中ゟ永雨、殊ニ五月朔日ゟ六日迄大雨

　　　降り続東辰巳風にて雨ふる事昼夜桶よりまけるご

　　　とくにして、七日朝より天気よし、依之田の草取

　　　ニ出ルと言へ共、六日夜中上手耕地水の出ル事大

　　　海のごとく、すわ大水とてあわてゝ取テ返しゆか

　　　の仕度抔致スと言へ共、大川通りは多分之事もな

　　　し、然ル共二日夜ゟ水番人足付置候所、七日朝ゟ

水増方致候ニ付、村中不残罷出谷古田圦ゟ瓦曾根

落圦迄巻畔仕立候処、明俵千五六百俵余遣申候、

扨上手耕地之出水ハ綾瀬川堤蒲生本郷宮押切候由

風聞致申候得共、元は味(見)沼用水瓦吹渡井押切水平

押ニ参り候由、尤水上村〻ゟ千人程参り其懸り之

役人衆江防方立切り候由、随て当地は葛西用水東

土手ニて巻畔仕防候処、又水上村〻ゟ切ニ参ル事

日〻夜〻滞なく、依之西方村伊原村申合番人大勢

付置右番情音次第ニ村中欠出ス事度〻ニ及、然ル

共無難ニて当村抔備足仕候

一扨又利根川之出水は戌年出水より五尺程高キ由ニ

候得共、戌年以来堤通り上置腹付御普請出来候ニ

付切所越所等無之候、尤自水之上ニ二番水にて川

俣切所出来候由、八日九日ニ聞へ申候得共、道法

遠方ニて大場へ押開候故か利根川添通り惣押、尤

大水ニハ無之候得共草稲時分故水腐相成り申候

一扨利根川と元荒川之間は不残水冠ニ相成水腐仕候、

尤麦は取上申候由

一元荒川南根通り弐拾ヶ村程無難ニて、夫より南は

綾瀬川并小塚原川之水にて水腐仕候

一十日ゟ川通水干方相見へ申候、尤川通りニて戌年

之水一弐尺程ひきく相見へ申候、切所越所等無之

此辺相たすかり申候

一下野国飛脚便ニ承候所、山〻之砂大分ニ押出ス事

戌年之ことく、田畑荒地多分ニ相見へ申候由、押

出候砂之高サ麦穂見へつかくれつ之由承り候

一米相場五月十日十四日十五日頃両ニ七斗四五升仕

候、尤江戸表ハ朝夕之当用計売買定相場一向相立

不申由、尤月合ゟ六月ニ成殊外下直相成申候、戌

年も右之通り有之引下ケ申候、末〻其意可得事ニ候

一東海道川〻大出水故飛脚之通路無之、相場不定之

由風聞ニ御座候

一五月七日水前相場五月二日市米両ニ八斗八九升ゟ

九斗、五月十二日市両ニ七斗四五升、同十七日市

両ニ七斗、同廿二日市両ニ七斗五升ニ引下ヶ申候、

晩大豆百文ニ六七合、秋あわ種子百文ニ壱升弐三

合、是も十四五日之間夫過候得は殊外引下ゲ大分

損致し候者御座候由

右之品〻山谷利左衛門旧記控有之間写之置候