覚
枡之儀従古来度〻御触有之、猶又安永五申年二月廿
九日東三拾三ヶ国江御触流左之通
一枡之儀東三拾三ヶ国は樽藤左衛門方枡之外無判之枡
遣候儀堅停止ニ候処、所〻ニて相用近来は別て無判
之枡多有之由相聞江不届候、追て樽藤左衛門方ゟ枡
改之者相廻し可申候間、急度相守無判枡相用申間敷
候、若於相背は可為曲事候
枡御定直段覚
一鉄判壱斗枡 壱挺ニ付 代銀三拾七匁七分
一同七升枡 壱挺ニ付 代銀弐拾九匁
一同五升枡 壱挺ニ付 代銀弐拾三匁
一同壱升枡 壱挺ニ付 代銀五匁八分
一同五合枡 壱挺ニ付 代銀三匁七分
一同弐合五勺枡 壱挺ニ付 代銀三匁
一同壱合枡 壱挺ニ付 代銀弐匁五分
一水判壱升枡 壱挺ニ付 代銀四匁
一同五合枡 壱挺ニ付 代銀弐匁八分
一同弐合五勺枡 壱挺ニ付 代銀壱匁八分
一壱合枡 壱挺ニ付 代銀壱匁六分
右は正徳二辰年三月被 仰渡候、右御定直段之外壱
厘壱毛たりとも高直ニ売渡申間鋪候、銭相場之儀は
其国其所之時相場を以割合売渡可申候、運送入方等
は勿論外ニ何ぞ名目を付金銭請取候儀決て仕間敷候、
此儀堅相守可申候事
東三拾三ヶ国ニて改取上可申枡分左之通
一都て無判之枡は不残取上可申候、譬鉄物寸法等自分
方之枡ニ相違無之候とも、無判ニ候ハゝ取上可申候事
一鉄物有之寸方等自分方枡之通ニ候とも、松之御一字
御焼印、并江戸町御奉行御焼印、自分方焼印無之外
之焼印ニ候ハゝ取上可申候事
但其国其所ニて枡拵、領主焼印又は其者之焼印押
取用候儀決て難相成事ニ候、併右躰之儀有之候ハ
ゝ何如様訳ニて致来候哉、内〻ニて得と承糺其旨
自分方江委細申聞差図ヲ請候上とて取計可申候
一御定枡前書之通り
鉄判壱斗入、七升入、五升入、壱升入、五合入、弐
合五勺入、壱合入
右七通り
水判壱升入、五合入、弐合五勺入、壱合入
右四通り、都合拾四通り
右之通ニ有之候処、国所ニ寄何斗枡何斗枡杯と申、
勝手能キ様拵取用候儀有之候ハゝ取上可申候、右は
枡ニ不限桶之類形チは何如様候とも、穀物塩油等其
外諸品計り候器ニ候ハゝ取上可申候、尤全常躰之入
物ニ候ハゝ取上候儀無用候、此儀入物之分は何斗入
何升入と急度定置候筈は無之候、仍て右之器枡を以
相様纔ニても多ク候分は入物ニ可有之候、少キ分は
甚怪器ニ候、右枡同様ニ用候器と入物之堺能ニ致勘
弁取計可申候事
一年来相立候枡、外之方四方江押候御焼印相分り兼真
偽難見分枡ニ候ハゝ、内之方四方江押候 松と申御
一字之御焼印を目当ニ改可申候、則右御焼印有之寸
法鉄物等別条無之候ハゝ何様古キ枡ニ候とも為相用
可申候、尤右松之御焼印無之候得は自分方之枡ニ
ハ無之候間取上可申候事
一松之御焼印有之、自分方之枡ニ相違無之候とも、裏
之方焼印并左右之寸法一面ニ彫抜底板落繰抜候枡、
或は号手懸板江色〻之裏彫等致候類は、何程新枡ニ
候共取上可申候、一躰枡江少〻ニても疵付儀は決て
不相成事ニ候、訳ヶは手懸等有之候得は枡取扱自由
ニ相成、計候節入減シ等有之候故、少々之手懸ニて
も相成不申候事
一御焼印并寸法等無別条、自分方之枡ニ相違無之候共、
鉄物損し取離ニ候枡は、入ニ減之有之候間取上可申
候事
一燈油商人遣候枡、不掃除ニて糟付キ埋り候枡入ニ減
し有之候間得と為致掃除入ニ相違無之、其外無別条
候ハゝ以後は時〻能掃除致遣候様相達為相用可申候、
尤相違有之分は取上可申候、且又稀ニは枡之内江別
ニ入底いたし其廻江蝋之類を塗其上を穢シ垢付候躰
ニ為見候枡、見懸は敢て子細も無之様と相見江候処、
是等は正敷御法度之二重同様ニて、表立候てく重キ
御置ニ被仰付儀ニ候間、若右躰之枡見候ハゝ改之者
勘弁を以寸法其外得と吟味之上、以来ヶ様不掃除ニ
て不埒成枡決て遣申間敷旨厳敷可申含右之枡取上可
申候、右入底之類油商売ニ限り候儀ニも無之、穀物
塩其外相用候事も難計候、万一有之候ハゝ前書之趣
相心得勘弁之上取計可申候、併其者心得違ニて事を
争候哉不届成儀申募候ハゝ無是悲事ニ候間、其前之
役人江相届右之枡封印ニて預置自分方江申聞差図を
請可申候事
一酒酢醤油其外水物之商売ニ遣候枡洩候由ニて、こく
そをかひ候枡見当候ハゝこくそを為落得と改、別ニ
子細も無之候ハゝ以来こくそをかひ候儀は不相成旨
申達之為相用可申候、尤意味有之枡ニ候ハゝ取上可
申候事
一柄杓之様柄を付候枡無判は勿論、如何様之焼印有之
自分方之枡ニ相違無之候とも取上可申候事
一東三拾三ヶ国ニて京都枡座福井作左衛門方之枡相用
申間敷候処、若相用候もの有之候ハゝ取上可申候事
右ヶ条之趣を以改来候、仍て右等之枡及聞候ハゝ其場
は無何事差置、早〻自分方江右之訳合委細ニ申聞差図
諸可申候、自分方より差図無之内一存之了簡を以先方
江申懸り候儀必致間敷候事
一枡調度由望之者江は売渡可申候、此方ゟ押て売渡候
儀堅無用ニ候事
一御枡取次所候迚、御威光ヶ間敷儀かさつ成儀致間敷
候、もの事柔和ニ取計可申候事
一取次所ゟ又取次為致候儀堅相成不申候事
一御枡荷物運送方并取次世話料為給分、御定直段之内
弐割半差遣候事
右之条堅相守可申もの也
寛政十午年十月 枡御改役所印
右は遠国ニて枡取次所相願、則取次被仰付候節、
右之御条目被仰渡御請書差出候哉、又は諸国一統
之御触流回章有之哉、何れニいたし候ても御枡改
御定直段之儀は右書面表相違無之事ニ相見江候、
勿論右書付江戸族人宿ニて写取有之間、旧記ニ組
込写置候、末〻諸人心得可知事ニ候