附出水一件始末覚書
同水防ニ付諸色人足遣方之分御普請役様ゟ御切手
頂戴之事
同御検見願并村方相談之上議定取替せ一札覚
同村方小前騒立御門訴訟ニ罷出候事
同大聖寺領地先葭畑へ堂圦ゟ悪水堀新規堀継事
同等持米貰請村方割賦之事
同夫食稈御拝借麦種子御拝借右両様五ヶ年賦返納之事
同御普請堤通并内郷被仰付候事
出水一件始末覚書
五月中旬ゟ六月下旬迄之間、日旱ニて田草弐番取出
来兼候処御座候て、水汲之四日も仕六月廿五日ゟ少
〻雨降出し、廿七日夕ゟ大雨ニて同廿八日廿九日三
日三夜大風雨ニて耕地一面水冠ニ罷成、弐三尺水湛
罷有候処、権現堂堤三十間程押切候様子ニ相聞候ニ
付、溜井廻り段〻致用置七月朔日夜ゟ水番瓦曾根村
西方村ゟ人足出申候、然ル処二日三日両日之内昼夜
壱時ニ五分七分壱寸位宛水増候処、四日朝急ニ四寸
程相増候ニ付、大きに驚き村中惣家別人足出し、八
条圦瓦曾根落シ堂圦其外所〻相防申候、然ル処同領
内伊勢野村ニて堤六拾間程切所出来、送水ニて西方
村耕地ニ四寸位参り内郷も相防申候、且権現堂切所
之儀は追〻欠落都合三百間程ト申事ニて水増方追〻
ニて大キに防能、夫ゟ昼夜防人足番人足壱ヶ所ニ拾
人程ッゝ出し、土俵之儀は家別高役其上村方東方伊
原村辺、百文ニ付八俵ッゝニて買上申候分代金六両
弐分程出金致し、右之通相防七月十日迄番人足村役
人付居世話致し、依て七月廿七日小前大儀ニ付弥右
衛門、利左衛門、孫兵衛、次郎右衛門高持四人より
米弐俵宛、高三石以下之小前百拾人余江米三升宛割
賦致遣候、尤水防入用之儀は壱石ニ付百文位相懸り
村一統無甲乙割合申候、水腐場所之儀は前どふ、向
どふ少〻いたみ、其外一向痛ミ無御座候得共、六、
七分之水損畑七分割水腐候由御役所江相届ヶ申候、
米直段之儀壱石壱弐升三四升と申候処、水入ニ相成
七月廿二日市七斗五升追〻高直段ニて六斗八升迄、
夫ゟ追々下直ニ相成七斗四升ゟ下米八斗五位迄、九
月上旬致候、其節水入場所見聞ニハ天明六午年二三
尺程少き由申事ニて、関東筋は勿論、伊勢上方一統
大水と申事ニ候、近村は松伏領皆損、新方領八、九
分、岩槻領二分、二郷半領皆水損、八条領内見田方
東方伊原右三ヶ村弐分通りいたみ、南百別府柿木四
条麦塚五ヶ村半毛、西方瓦曾根登戸ハ少〻いたみ、
青柳蒲生半毛、其外皆損と相見へ申候谷古田領五ヶ
村皆水腐、庄内領百間領皆水腐、幸手領同断、越ヶ
谷領三、四分通り損毛有之由風聞御座候
水防ニ付諸色人足遣方之分御普請役様ゟ御切手頂
戴之事
覚
一明俵 百五拾俵 人足四拾人 東 方 村
九拾五俵 人足弐拾人 見田方村
拾 俵 人足弐人 南 百 村
百三拾俵 人足拾五人 柿 木 村
百 俵 人足拾五人 千 疋 村
三百俵 人足拾五人 麦 塚 村
拾五俵 人足四人 四 条 村
五拾俵 人足六人 登 戸 村
百 俵 人足七人 伊 原 村
弐千弐百五拾俵 人足三百廿六人 西方村
一縄四百五拾壱房 西 方 村
一杭木八拾本 西 方 村
内長五間杭弐拾本
長三間杭弐拾本
長弐間杭四拾本
右は当戌七月十九日ゟ打続風雨、元荒川通大水瓦曾
根溜井廻り用悪水圦前重築留、并堤通越水之場所巻
畔上置水防諸色人足村〻指出し候分書面之通りニ候、
前〻葛西急破入用之儀は来春組合水下割返し積り有
之間、急度無差支様可被致候、為念請取遣申候以上
戌八月 水防懸り 御普請下役
蓮見伴七印
八条領西方村
右之通御切手頂戴西方村ニ有之候、末〻心得可知候
御検見願并ニ村方相談之上議定取替一札覚
儀定一札之事
一当水難ニ付田畑一面水冠ニ相成、其段御訴申上置候
処、猶又去八月六日大風雨ニて田方一躰ニ伏稲罷成
一向実法不申候ニ付、小前一統御検見相願呉候様申
ニ付、村役人共立会得と耕地見屈ヶ候所実〻難差置
候ニ付、村方相談之上御検見御願申候積り相決申候、
然ル上は右一件ニ付何ニても申分無御座候、若後日
彼是六ヶ敷申者御座候共五組ニて申合村方組訳ヶ等
決て仕間敷候、万一組分等仕候節は譬ハ一組たり共
不足出来候ハゝ五分高引平均を以割賦仕べく候、右
様相談相決御検見相願申候上は、右一件ニ重て出入
ヶ間敷儀決て仕間敷候、依之村役人百姓代一同議定
連印致置申候処、仍て如件
享和二戌九月 八条領西方村
名主 平 内印
同 弥右衛門印
同 利左衛門印
同 茂右衛門印
年寄 長 兵 衛印
同 山 治 郎印
同 九 平 治印
同 藤 蔵印
同 沢右衛門印
百姓代 源 兵 衛印
同 仁左衛門印
同 次郎右衛門印
同 長左衛門印
同 六左衛門印
同 平 三 郎印
同 久右衛門印
同 佐五兵衛印
大境組中
右之通西方組、田迎組、藤塚組、山谷組、大境組右
五組江取替せ置申候、勿論右議定之儀は年寄九平治
殿当御検見ニ差障り不承知之筋申出、彼是村方相談
調兼候ニ付、左之議定取替せ申置候得共、後日何ニ
も相成申間敷書付ニハ御座候得共、連印有之故書留
置候、兎角願筋ニ付差縺等有之候ては其願成就不致
事ニ覚候、已後は大切之願ニ付候てハ機嫌克致度事
ニ御座候
一野口辰之助様御支配ニて秋御検見相願御様御座候処、
弐合毛ニて改六合六勺、壱合毛ニて八合、又壱合毛
ニて七合八勺、笹立五勺毛ニて九合都合四坪ニて平
均七合九勺、干減壱割水腐反別弐拾六町余引戻し被
成候ても、定免九厘弐毛内損仕候得共、御検見ニ相
立不申、依て御定免請可仕之段御廻村先ニて被仰渡
候得共、御請印不仕御慈悲相願居御帰府之上ニて色
〻内伺仕候得共とても御検見ニハ相成不申趣被仰聞
候、何事も行屈兼残多儀ニ御座候
村方小前騒立御門訴訟ニ罷出候事
一惣小前一同御支配御役所罷出、願之趣は当水難ニて
小前一同難儀罷有、然ル処今般御検見御願申上候得
は九厘弐毛之内損故、御引方之御定法ニ相当り不申
段勢〻御利解之趣村役人よりも承知仕候、然ル処地
主共方へ懸合候得は御検見御引方無之上は反ニ付三
升宛小作引方致可申由申之候得共、当村小作入附之
儀は九斗ゟ壱石五升六升迄御座候得は、中〻右御様
合ニてハ小作上米ニ引当り不申候間、何れニも小前
相続罷有様御勘弁相願申上度、御役所元〆壁谷太郎
兵衛様御吟味之節申上候処、右小前先達候者孫八、
浅右衛門、久右衛門、宇兵衛治、幸左衛門都合五人
手鎖被仰付、相残候分拾人拾五人宛江戸宿八軒江御
預ヶ被仰付候、然ルニ依て村役人当日夜江戸着御支
配江御屈ヶ翌日罷出候処、右着屈ヶ文言荒増覚書村
役人惣代名主茂右衛門同弥右衛門右両人ニて
乍恐書付を以奉申上候
武州埼玉郡西方村役人一同奉申上候は、昨夜当村方
小前大勢御門訴罷出候段驚入、踏ゟ取留可申と追掛
ヶ候得共、最早追次不申当惑至極仕候、依て小前御
願筋ハ惣代を以為相願申度奉存候間、何卒御慈悲を
以一同御下ヶ被仰付被下置候ハゝ偏ニ難有仕合ニ奉
存候段、
右之心取ニて願書相認メ差出候処、御前之御吟味ニ
相成被仰聞候は、村役人共此度小前百姓一同御門訴
罷出候処、猶又村役人取留可申と追懸ヶ罷出候得共
最早追次不申段、其上願書ニも小前惣代を以為相願
申度由と有之上は、村役人腰押致し差出し候儀ニ相
見得不届至極之取計方、一同手鎖申付追〻頭取吟味
可申付由被仰渡、其日一日夕六ッ時迄白洲留ニ相成
候、翌日朝五ッ時ゟ段〻御吟味ニて流馬喰長治郎下
男幼年ニて罷出居候得は、右之者を呼出寄御吟味ニ
て申立候ハ、伴七方ゟ申次ニて罷出候由、猶伴七吟
味有之候得は権左衛門方ゟ申次候由、次第〳〵吟味
相分り村方五分通り白条致し、其上老若男女之訳ヶ
なく村方ニ懸り合有之者共江飛脚を以て御呼出し、
其日壱日夕六ッ時迄白洲留ニ御座候、又翌日罷出御
吟味中ニ御座候処、当村方安養院東光院両寺御慈悲
願下ヶ罷出漸〻御聞済相成候、尤惣小前ゟ始末品〻
書入惣連印ニて役村人加印書付両寺江差入候処、右
書付写を以御下ヶ願仕、又村役人共ゟ小前之方へ米
拾五俵は夫喰手当郷力致し遣し申候筈ニて御下ヶニ
相成、帰村之上村役人名主年寄多少之割賦は有之候
得共、都合拾五俵持寄安養院ニて小前江右之米割渡
し遣し、右之逸〻并両寺江差入置候書付ノ儀共、末
〻無忘脚心得可知候、尤両寺江入置候書付文書聢と
覚へ無之心懸ヶ村方へ写置候様被致度事
大聖寺地先蒔畑江堂圦ゟ悪水堀新規堀継事
右は村方相談之上、不動尊裏堂圦前元荒川落口上夫
ニ築廻し、堤添ニて大聖寺領地先葭畑江新規悪水堀
継、源兵衛脇渡船通江油樽継立抜図ニ致し猶又堤添
川下江自然と水落候様土手類築立申度ニ付、大聖寺
江得と懸ヶ合候は、先年本堤御はか場ゟ仁左衛門脇
迄大聖寺境内ニ囲込ニ相成居、天明六午年已来二重
堤之方情〻御普請相願当時本堤ニ相成候故、右之替
りニ葭畑へ悪水堀継新規仕度懸ヶ合則相調、右ニ付
書付為取替も可仕置処、相互ニ等閑ニ相成居候得共、
右等之儀末〻忘脚無之様大聖寺様ニも御代替り之節
は御申伝可然儀ニ御座候、勿論当戌年二月圦前上夫
ニ築廻し有之候故、七月出水之節圦樋大破仕居候得
共、水防之節は格別手繰ニ相成防留満足仕候、其後
又〻内郷急水吐落方之ためニ圦前築廻しを堀割相流
し当時ニ至候てハ新堀之方不用之形相成居候得共、
得と何れ之方弁利宜敷候哉御様し被置可申候
夫食桿御拝借麦種子御拝借右両様五ヶ年賦返納之事
同年夫食手当相願候処、稗百弐拾俵五斗ニて御貸渡
し有之、亥ゟ卯迄五ヶ年賦返納候積り被仰付候、然
ル処右稗之儀は如何致候哉五斗入壱俵ニて正味三四
升五升位ゟ外無御座由、御支配所村〻風聞御座候得
は当村方ニてハ小前江割賦不仕、当村平内殿翌年村
〻返納秤納引請候間、則右稗俵拵致直し御蔵納ニ相
成、依五ヶ年賦返納金ハ村方半金平内殿半金差出し
申候て五ヶ年上納仕候
同年麦種子御拝借当村方江金五両三分御貸渡しニ相
成、翌亥ゟ卯迄五ヶ年賦上納仕候
寄持米貰請村方割賦之事
翌年亥正月弥右衛門、利左衛門、孫兵衛、次郎右衛門
高持四人御代官御役所江御呼出しニ相成、寄持金四
人ニて可差出様御利解被仰付段御勘弁相願、其上申
立候は貯金無御座候間米百俵差上切ニ差出度段相願
候処、其旨御聞済ニ相成候ニ付、右引訳ヶ米三拾五
俵弥右衛門出し、拾五俵利左衛門出し、弐拾弐俵半
孫兵衛出し、弐拾弐俵半次郎右衛門出し都合〆百俵
差出候処、右之内七拾俵は二郷半領江御救米ニ相成、
残て三拾俵は当村方ニて相願候ニ付被下置候、依て
米拾五俵は正石ニて割渡し、残拾五俵は代銭ニして
村自普請壱人百文宛遣し候、実〻困窮之者江は弐百
文宛遣、右出人足割残り弐両弐分計夫銭足合致候
寄持米当村方高持四人江被仰付候儀は、御検見後小
作米之儀を申立村方小前騒立候故、右之過怠ニ御役
所ゟ高持共江被仰付候儀ニて、已後右等之年柄は村
役人并高持之者共よくよく勘弁取計可有之事ニ覚候
御普請堤通并内郷被仰付候事
戌年八月ゟ御普請相願、翌亥春御普請被仰付御掛り
御勘定松嶋丈太夫様并御普請役楢原鎌十郎様、本田
政右衛門様、高岩和十郎様御掛りニて狭堤ニて瓦曾
根落杁水防土取跡を、堤欠崩と名目替壱ヶ所廻堤ニ
て腹付壱ヶ所都合御入用金五両三分ト永廿文御普請
被仰付、大見分鈴木門三郎様御越被遊候処、腹付御
普請所間数三尺短く出来居、右引戻之ため新宿迄村
役人共呼出ニ相成、殊外諸入用相懸り難儀仕候、中
〻以村方ニて間数等余分ニ致候儀は格別、不足ニ仕
立置候心取曾て無御座候得共、右様之間違出来御普
請金減其上多分諸雑用相懸ヶ候儀、已後村役人共は
心得可知候事ニ御座候
内郷御普請之儀は御代官様ニて御積り被遊候処、猶
又御勘定大井安三郎様御掛りニて増減有之、当村方
之儀用悪水渡村往来取繕御普請ニ付、土形計ニて四
拾五両程之御普請出来、村方壱人ニて四百文ッゝ遣
し、已上家別役弐廻りニて不足之人足は高役を以相
勤メ可申筈取懸り、勿論其已前寄持米銭ニて自普請
出立候上之儀ニて、手直し同様之事故堀浚往来通造
り共ニ手軽く出来、格別小前之介ニ相成難有御儀ニ
御座候、四月一日出来栄御見分として大井安三郎様
御越被成無滞り御遠見ニ相成候