○ 正徳弐辰年
(朱書)
「道中御往来ニ付、御条目数ヶ条被仰出宿助郷共
堅可相守御触」
覚
一御用ニて道中往来之面〻 御朱印人馬之外添人馬多
相立候由相聞候、前〻も申達候通無用之添人馬出さ
セ候儀堅停止たるへく候、御朱印員数之外ニ可入人
馬之分ハ、御定之賃銭無相違急度相払わせ可被申事
一御用ニ付て往来之面〻、或ハ在番或ハ諸大名惣て道
中往還之輩人馬割之役入可有之事ニ候間 御朱印人
馬幷賃人馬可入程相定させ、賃人馬之分ハ賃銭無相
違払候様ニ人馬割役之者問屋場ニて相残、委細遂吟
味候様ニ可被申付候、其外之家来又は雇之者共私ニ
人馬駕籠出候様ニ申懸ケ候共、役人之断無之候ハゝ
一切差出ましき由、宿〻問屋場ニ相断候様ニ可被申
付候、道中之者共ニも右之通可心得旨申渡候事
一往来之面〻ハ家来幷末〻雇之通り人馬、近年ハ主人
之権威以道中ニて非分之仕方等有之、或は下〻持へ
き道具をも人足ニもたせ、其者ハ馬駕籠ニ乗或賃銭
をも不払者共有之由相聞候、右之類之不届無之候様
ニ雇人足ハ不及申、其請負之者迄急度申付可召連候、
自今以後不法之族有之は道中宿〻ニも改之、家来幷
やとひ之者たりとも其所ニ留置、早速道中奉行へ相
断候様ニ申渡候間、其旨を可被存事
一往来之面〻家来幷やといのものに至迄、駄賃旅籠銭
等無相違相払候様ニ急度可被申付候、旅籠銭等或ハ
不相応ニ減之候て相渡候、或ハ無相違請取由証文為
仕不相払輩有之由相聞、向後右之通之儀共有之にお
いてハ、是又早速道中奉行江可申断由、宿〻江申渡
候間可有其心得事
一諸荷物貫目之儀、御定之通無相違様ニ可被申付候、
今度荷物貫目相改候場所定り、若御定ゟ重キ荷物於
有之ハ、御用之荷物候由申候共継送へからす旨申付、
其外宿〻江申渡其心得可有之、且又在番之面〻京大
坂駿府三度飛脚荷物近年貫目重クかさ高成荷物有之、
夜廻りも往来候由相聞候、飛脚請負之者其外商人之
荷物ましえさる様ニ堅被申付、尤在番之面〻自分荷
物も御定之通を以猥ニ貫目重キ荷物被差出間敷候、
古来ゟ夜通り之飛脚ハ猥ニ不相通定ニ候間、向後無
拠子細にて通之飛脚出候ハゝ番所江其旨を在番頭之
証文を以可被指出候、飛脚請負之者共ニも此等趣急
度可被申付候、道中ニても其心得を以改之、若貫目
重ク荷物有之か又ハ証文無之夜通し相通候ハゝ押置、
早速道中奉行江可訴之、詮義之上飛脚才料は不及申、
右請負人迄可為曲事旨申渡候間、其心得可有事
一江戸京大坂其外国〻ゟ町人請負ニて令往来、其用之
諸荷物近年貫目重ク荷数も多道中人馬大分相立、其
上御用之儀を立人馬賃銭不足ニ相払、其外不埓之仕
方共有之由相聞候、向後勿論御定之外重ク不仕、其
荷数貫目随相定候人馬之賃銭無相違払之、少も悲分
之儀仕間敷候旨、其御用承之面〻ゟ念入被仰付向後
右之類之義無之様ニ可被申渡候、道中ニても改之、
若貫目重ク候か又ハ猥ニ荷数多不審之儀も候ハゝ、
縦御用之荷物之由申共継送らす其所ニ留置、早速道
中奉行ニ訴之へし、詮儀之上荷物才料ハ不及申、請
人迄可為曲事旨申渡候間其心得可有之事
一道中宿〻之者共不埓之儀有之節は、旅人ニゟ其所之
問屋年寄等二日路又三日路召呼、又ハ訴訟之ために
付添参候儀も有之由相聞候、縦宿〻之者共不届キ之
仕方有之候とも、問屋年寄召呼候てハ其宿人少ニ成
り御用も差支申事ニ候間、向後問屋年寄等召呼候儀
は不及申、訴訟として付ケ添参候も相止させ、其旨
をハ道中奉行江被申達、奉行所ゟ詮義之上急度可申
付候、其心得可有候事
右之条〻近年道中宿〻御定之外人馬多かゝり、其外
旅人不法之事共有之宿〻ハ不及申、助郷村〻迄も及
困窮ニ候由相訴へ候ニ付、委細穿鑿之上を以被仰出
候、向後書面之趣急度可被相守候、縦組中支配幷家
来之不法有之候共、其番頭役所主人之越度ニ可罷成
候間、其旨を可被相心得者也
正徳二辰年三月
定
一道中往来之面〻雇人足共惣て近年不埓之仕方多、就
中御用ニて往来又ハ在番之面〻ゟ雇候節、主人之権
威を以弥不埓いたし、或ハ猥ニ手替之人足を取其人
足方ゟ銭を出させ候へて指ゆるし、或ハ自分持候道
具等人足ニもたせ、其者ハ馬駕籠ニ乗賃銭相払わす、
又は宿〻之者に対悲分之儀申掛ケ、若宿〻之者申旨
有之候ヘハ種〻之あたをなし候由、委細ニ相聞不届
之至候、向後江戸京大坂ニて雇人足請負之者ニ申渡、
人足請負候度〻人足共ニ急度申付ケ、右之通之不届
キ不仕無拠子細有之手替之人足取之、又は馬駕籠等
ニ乗候節は御定之賃銭無相違払之、旅籠銭等之儀こ
れに同しく少も非分之儀為仕間敷候、道中宿〻江も
若不届之族有之おいてハ誰之雇之者たりとも其所ニ
捕置、道中奉行へ早速可訴之旨申渡候間、詮義之上
当人ハ不及申ニ請負人迄可為曲事事
一京大坂駿府三度飛脚、近年ハ貫目重キ荷物等有之其
上猥夜中も相通り不埓之義共有之由ニ候、向後在番
之面〻荷物之外商人等之荷物堅ましえさるやうニ仕、
無拠子細有之夜通之飛脚指出候ハゝ、番頭之証文を
以通へき由相定、此旨所〻之飛脚請負人ニ申渡、昼
夜共ニ人馬賃銭等定之通無相違相払候様ニ可有之候、
道中宿〻ニても改之、若貫目重キ荷物有之て証文無
之夜通し之飛脚相通候ハゝ其所ニ留置、早速道中奉
行へ可訴之旨申渡候間、詮義之上飛脚宰領は不及申
ニ受負人迄可為曲事事
一江戸京大坂其外国〻より町人請負ニて往来候御用之
諸荷物、近年貫目も重ク荷数も多ク道中大分相立、
其上御用之儀申立候て人馬賃銭不足相払、其外不埓
之仕方共有之由相聞候、向後御定之外貫目重ク不仕、
尤荷数貫目に随い相立候人馬賃銭無相違払之、少も
非分之儀仕間敷旨、其御用達之面〻ゟ念入被申付相
改させ不埓無之様ニ可被申渡候、道中ニても改之若
貫目重ク候て又ハ猥ニ荷数多ク不審之義も候ハゝ、
縦御用之荷物たりとも継送らす其所ニ留置、早速道
中奉行へ可訴之旨申渡候間、詮義之上是又荷物宰領
ハ不及申ニ請負人迄可為曲事事
右之条〻其所〻奉行所幷支配〻ゟ請負人共へ急度可
被申付者也
正徳二辰年三月
右之通御書付出候間写遣候間可得其意候、尤江戸町
続支配所、其外御代官所中へも右之趣急度可被申付
候以上
三月八日 大大隅守
平若狭守
中出雲守
荻近江守
伊奈造酒之助殿
家来
定
一公家衆門跡方道中往来之人足三十弐人、馬三拾疋に
相限り候処ニ、近年ハ御定人馬之外添人馬多く相立
候故、宿〻幷助人馬出候在〻迄困窮に及ぶ由相聞候、
向後はたとひ宿〻馳走として人馬差出之候とも御定
之員数、馳走之人馬共に都合五拾人三十五疋之外は
一切差出すへからさる事
一御用にて道中往来之衆中、是又近年は御朱印人馬数
之外添人馬多相立候由相聞候、向後は御朱印員数之
外添人馬差出し候儀堅可停止事
一道中往来之面〻、雇之人足近年不届之仕方共有之、
就中御用ニて往来之衆中雇之者主人之権威を以て猥
に手替りの人足取之、其上馬駕籠等に乗り賃銭はら
はさる者も有之、其外非分之儀共申懸け宿〻の費多
候由相聞候に付、江戸京大坂において人足請負の者
方より雇之人足共ニ急度申付不届無之様に申渡候間、
向後宿〻にても其旨を存し、誰の雇之者たり共無用
之人馬出させ候歟、又は非分之儀仕候ハゝ其所に留
置早速道中奉行江可訴之、当分之難儀を存し用捨せ
しめ後日に相聞候におゐてハ、宿〻の者迄急度可申
付事
一御用に付て往来之衆中、其外諸大名惣て道中往来之
面〻向後ハ人馬割役人を問屋場に相残し、御朱印人
馬賃人馬可入ほと差出させ、賃人足之分ハ賃銭無相
違相払ひ、諸事不埓無之様〻吟味仕候由、其外之家
来幷雇之者共より私に人馬駕籠等出し候様に申懸候
共、人馬割役人之断無之候ハゝ一切不可差出之由申
達候間、宿〻にても其旨を存し費之人馬不相立様に
可仕候、此上不埓之族も有之候ハゝ、誰の家来たり
共不隠置早速道中奉行江可訴之事
一諸荷物貫目御定之通弥用捨なく急度相改め、人馬継
之所〻にて猥ニ不罷成様に申送るへし、若不埓成儀
捨有之は、御用之荷物之由申とも継送らす早速其旨
道中奉行江可相訴事
一町人請負にて往来候御用之諸荷物貫目等重く、其上
御用を申立賃銭も不足に払候者有之由相聞候に付、
向後は貫目重く不仕、相立候人馬数之通賃銭無相違
相払ひ猥なる儀無之様ニ所〻奉行所より請負人共江
申付候間、宿〻にても其旨を存し若此上にも貫目重
キ荷物歟、又ハ不相応に荷数多く不審なる事も候ハ
ゝ御用之荷物之由申とも一切継送るへからす、請負
之町人之名を承届是又道中奉行江早速可訴之事
一自今以後宿〻より添人馬差出し候儀停止之上は、加
宿幷助郷江無用之人馬相触へからす、若加宿助郷無
江用之人馬を差出させ又は勝手能方江は宿人馬を相
立、不勝手之方江は助人馬を差出し候類の事あるへ
からす、互に帳面ニ印形仕重て出入無之様ニすへし、
違犯之事有之においてハ急度可有其沙汰事
附加宿幷助郷村〻にても宿より相触候通人馬無相
違可出之、或ハ不足或ハ不参又は人馬之数を合す
へきため用に立さるものを差出候ハゝ可為曲事事
一往還之輩に対し理不尽なる事仕らす、たとへ軽き旅
人たりといふ共人馬無遅滞差出し、駄賃駕籠旅籠銭
等も不相応候儀不申懸、山坂川渡之所〻にてもこれ
に准し、惣て宿〻において往来の難儀に及はせ候儀
於有之は、其本人ハいふに及はす問屋年寄共急度可
有其沙汰事
一道中宿〻近年度〻類焼之所共有之候、小火之節一宿
之者共精に入候ハゝ消留へき事に候所に、人〻道具
を退候儀にかゝはり消候仕方油断有之故と相聞候、
常〻火之元念を入若出火有之候ハゝ早速に馳集り可
消之、若又あやしき事も有之節は不隠置道中奉行江
可訴之、此上不沙汰なる儀於有之は吟味之上問屋年
寄迄急度可有其沙汰事
右条〻幷前〻定之通堅可相守之、若此等之趣に相背
き、向後宿〻又は加宿助郷難儀候由申訴候は可為越
度者也
正徳二年辰三月 奉 行
一道中往還之儀ニ付此度御条目出候間、右之趣弥相守
末〻猥ニならさる様ニ宿中申合、尤軽キ旅人たりと
も聊不礼非分之儀いたす間敷候、就中改所之儀は入
用をも被下被仰付上は猶以不埓無之、外宿〻之格に
も成候様ニいたし、助郷ゟ出候人馬も改所へ寄候員
数を以余宿之人馬遣候数をも改、若此上無益之人馬
割懸ケ候宿も於有之は吟味之上曲事たるへき事
一道中旅籠銭等之儀、只今迄旅人により過分之儀申掛
ケ候所も有之由粗相聞江候、向後軽き商売物等迄申
合諸色高直に致候儀堅不仕、時〻之直段を考其宿〻
問屋年寄幷頭立候者遂相談、宿中不同無之様に可仕
候、若此趣に背き過分之儀申懸候者も有之、旅人ゟ
其断あらは問屋年寄吟味可仕候、不埓之仕方外より
於相聞は問屋年寄迄急度可有其沙汰事
一自今加宿助郷より御条目に相背き不埓之儀も候ハゝ
其旨早速宿より可訴之、内〻ニて過料を取又は過怠
として助郷之者宿江呼置候儀なと堅停止たるへき事
一宿ゟ助郷江も御条目に違ひ不順之儀も有之候ハゝ助
郷ゟ早速可訴之、内〻ニて争論に及ひ差出すへき人
馬滞へからさる事
一旅人により此上非分之仕方も有之節は宿より早速可
訴之、後日至り旅人之非分ニ付困窮仕之旨於申付は
宿〻之者可為越度事
右は此度道中筋不法之儀可相改旨被仰出、御条目差
遣ニ付猶又如斯候、御条目幷此趣宿〻問屋場に張紙
にしるし置、助郷村〻江も写之させ宿助郷共に堅可
相守、若違犯之輩於有之は可為曲事者也
正徳二年辰三月 道中奉行