●文政二卯年
(朱書)
「御代官吉岡様ゟ窮民共出精働方被仰渡、其上御
手当金可被下御廻状」
支配所村〻内、及老年夫妻無之幼年ニて両親も無之、
老年もの無子又は病身長病或は家内厄介多、田畑地
味不宜手余荒地等ニ相成、御年貢弁納いたし連〻及
困窮、外助成抔無之家作及大破雨露寒気浚兼候類、
且欠落跡株相続人無之、親類組合村役人共申合田畑
引受候ても手余等ニ相成、御年貢高掛り物弁納いた
し、又は前〻ゟ荒地有之引方不相立困窮之上、無謂
可及元族有之候ハゝ可相成丈、親類組合村役人其外
身元宜敷もの共厚申合誠実ニ心掛、窮迫ニ至候もの
共行立候様助合遣、百姓取続為致実〻不及力節は御
手当等之儀早速可願出、尤自分廻村之節は不及申、
手附手代共時〻廻村先〻江も願出候様可致候、勿論
得と吟味之上申立候趣無相違分ハ、窮民御手当金を
以夫〻手当いたし取続候様いたし可遣条可得其意、
仮令困窮ニ候共無油断農業出精いたし候得は、自然
と作徳助成も有之て立行候様不遠可相成事ニ付、聊
懈たい無之縄菰莚掛物等之手業家内一同申合、昼夜
出精相働百姓相続いたし御大恩忘却不致儀可心掛候、
右手当金之儀去ル申年相触追〻多分之手当金相渡為
取続候も有之、猶又追〻支配所高一倍ニ相成、尤寅
年ゟ三ヶ年間格別御手当御増被下置 御仁政之程冥
加至極難有儀ニ付、右之趣窮民共江厚申聞猶此上窮
迫ニ至り候もの有之、実〻取続兼候分は御手当之儀
可願出候、此廻状早〻順達留り村ゟ可相返もの也
卯五月廿三日 吉岡次郎右衛門印
武州埼玉郡
八条領
西方村