『越谷の歴史物語第一集』に引き続き、今回第二集を発刊することができた。この歴史物語に集録された各稿は、昭和四十三年に越谷市史編さん事業が発足して以来、市民各位の事業協力と郷土の理解を深めていただくため、越谷市史編さん前編集員、ならびに編さん室員等により、広報「こしがや」紙上の「市史編さんだより」に交代で執筆掲載され好評を博してきたものである。
このうち第一集は主に編さん室員が執筆した稿を中心に編集したものであるが、今回の第二集は前編集員各位の諒解のもとにこれを本書に収録することができた。したがって専門的な分野から執筆された各編集員の個性的な叙述が本書に一段と色彩を添え、かつバラエティに豊んだ特色ある書にしていると思われる。
すでに御承知のように、越谷は各文献に記録された名所・史蹟などというものはなく、また日本史の上で名の知れた英雄や領主の居住した城下町でもない。強(し)いて言えば水に恵まれた自然環境のもと、水田稲作農業を中心とした平和な農村と、日光街道第三次の活気ある宿場が越谷の特色として把(とら)えられるに過ぎない。このため越谷の歴史編さんにあたっては、その組立上何を中心に置いて構成するか多くの困難がともなったが、結局平凡な庶民の歴史という眼目を柱に立てて編集された。
幸い市民各位その他関係各機関から、多くの越谷関係地方史料を供与され、史料編を含め越谷市史全六巻を刊行することができた。もっとも名の知れた偉人・英雄・史蹟・名所などを前面に出した歴史からは程遠い庶民の歴史となっているだけに、人びとの興味や関心はきわめて低いものになっていることはいなめない。しかし平凡な庶民であった我々先祖の歩んできた道は、それだけに身近なものであるが、郷土の歴史や日本の歴史にとって重要なものであることに違いない。世の中の変革は庶民の動向によって進められてきたからである。
こうした事柄を踏まえ郷土の先人が歩んできた道の一端を現在の人びとにもより理解され親しまれるものにするため、各稿物語り風に叙述されたのが「市史編さんだより」であり、これを集録したものが『越谷の歴史物語』である。昔と今を考えるうえで参考の一助にして戴ければ幸甚である。なお本書に掲載した各稿の末尾に、それぞれ執筆者の名を注記したが、本書への掲載を快よく承諾された諸先生ならびにその他の方々の御好意に対し、紙上から厚く感謝申し上げる次第です。
本間清利