埼玉鴨場(さいたまかもば)

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 越谷市大林の宮内庁(くないちよう)埼玉鴨場は、明治四十一年今からおよそ七五年ほど前につくられたおよそ一〇ヘクタールの面積をもつ御猟場(ごりようば)です。ここは外国からきたお客さんや天皇はじめ皇族(こうぞく)方が鴨の猟をするために設(もう)けられた場所です。

 この鴨は秋になるとシベリヤ方面からえさを求めて日本にやってきて、春になるとまた帰って行く渡り鳥ですが、秋から春にかけては数知れないほどの鴨が越谷の鴨場に集まりました。そして毎年のように外国のお客さんや皇族など、たくさんの人がこの鴨場をおとずれて鴨猟を楽しんでいました。昭和三十二年三月十一日にも、天皇、皇后(こうごう)、両陛下(りようへいか)をはじめ皇太子や皇族がそろって鴨場をおとずれ鴨猟をたのしんでいました。

 このときの新聞記事によりますと、皇后陛下は初めての鴨猟であったため、獲(え)ものは一羽だけだったとあります。またこの日越谷町民の多くは両陛下のお成りを知らなかったので、沿道の出迎えも少なく静かであったとも記されています。また昭和三十四年の秋にも皇太子御夫妻が鴨場をおとずれています。

 もとはこの鴨場に数万羽の鴨が集まったといいますが、今では都市化のえいきょうからか、集まる鴨は少なくなりつつあるといいます。でも越谷にはこの鴨場があるために、うっそうとした樹木が生い茂る、昔ながらの自然の緑地帯が残されています。一般の人はこの鴨場に自由に立ち入ることはできませんが、この緑地帯の今後をわたしたちはこれからもあたたかく見守っていきたいと思います。

埼玉鴨場の表門