越谷市長 島村慎市郎
この度「越谷ふるさと散歩(上)」に引続き、(下)の発刊をみることができました。本書には前回の(上)で扱われた元荒川通りの散歩コースを除き、古利根川通りや浅間堀(新方川)通り、綾瀬川通り、それに間久里や蒲生の日光街道通りなど、十一の散歩コースが設定されております。この(上)(下)のふるさと散歩で、越谷地域における名所旧蹟ならびにその放事事歴などのおよそが紹介されております。
考えてみますと、新しく転住された方々はもちろんですが、古くから越谷に住んでいて、越谷の隅々まで知っていると思いこんでいる私達でも、何処にどのような文化遺産があり、どのような変遷を経ているかなどを改めて思いなおすとき、あまりにも知らないことが多いのに今更驚くことがあります。こうした意味で本書は各地区個々の歴史事象とともに、現況を知るうえでもたいへん参考になるものと思われます。
もっとも越谷の現況は道路の造成をはじめ河川の改修や宅地の進出で刻々変貌をとげておりますので、本書が必ずしも将来にわたっての越谷の手引書とはならないでしょう。でもとかく忘れ去られようとしている私達ふるさとの過去を考えるうえで、本書の刊行はそれなりに意味があるものと考えられます。ことに二十年三十年先の将来、現在との対比のうえで、どのように変ったかを知るには、本書の記録が貴重な参考資料の一つになることと信じております。
どうか多くのご家庭に「ふるさと散歩(上)(下)」を備えられ、越谷を散策するときには、本書をその参考の一つとして用いられることをおすすめします。と同時に個々の点では本書を手がかりに、より深い郷土の調査研究を進められ、越谷独自の文化の発揚に御尽力下さることを望んでやみません。
昭和五十五年四月