山谷の香取神社

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 さて道をもとに戻り昔ながらの面影が偲ばれる旧道を西に向かって行くと一筋の舗装道と交差する。この道が県道平方東京線でここから古利根川沿いに新方から増林方面に通じる。この県道を越して行くとまもなく旧道は県道野田岩槻線と合わさる。さらにこの県道を少し行くと国道四号バイパスと交差するが、これを越して行くと平方の山谷集落である。この辺りは県道を中心として工場や住宅がかなり入り組んで建てられている所であるが、この一角に山谷の鎮守香取神社がある。入口は県道から入った細道に面しており、ちょっとその所在が確かめにくい所である。

 住宅や工場が密集した細道に面しその入口に花崗岩の大きな鳥居が建てられている。境内はさほど広くはないが楠木とみられる大木が数株枝を広げている。神殿はトタンで葺かれその外壁もトタンで仮補強されている。境内には安永六年(一七七七)の御手洗石や昭和八年の敷石奉納碑などがある。また神殿の後ろ一叢れの笹竹の茂みの下に寛政八年(一七九六)の青面金剛文字庚申塔、それに稲荷の祠堂が二堂ならんで建てらられている。

 香取神社を出てさらに県道を進むと、右手は一団の新興住宅が畑地と混在して建てられているが、左手は茅(かや)や荻(おぎ)などの雑草が生い茂る沼沢地である。ここがもとの会野川河道跡の一部で春日部市との境を画しているが、現在春日部市側からの宅地造成が進み、荒野を思わせるような雑草の茂みの間から、荒野の地にしては調和のとれない新興住宅のつらなりをみせている。しかしこの河道跡も埋め立てられて整地される日は、そう遠いことではなかろう。このいまだに沼沢地を残している県道を暫く行くとバス停武里駅入口前に達する。行程およそ六キロメートル、ちょうど平方集落を一巡したわけであるが、県道野田岩槻線を除くと車や人の住来も少ない道で、農村の面影を訪ねて歩くうえでは、まだ田園情緒を楽しむことができる一つのコースといえよう。

山谷香取神社
会野川河道跡