越谷市教育委員会社会教育課
専門員 本間清利
この『わたしたちの郷土こしがや』は、児童向けの郷土誌(きょうどし)として、なるべくわかりやすいように編集(へんしゅう)したつもりですが、それでも読みずらいところや、なじみがたいところが多いのは歴史という学校でもあまりとりあげてない教科の一つであることによるものでしょう。できれば父兄の方も一しょになってこの小冊子(さっし)をひもとき、郷土をすこしでも理解(りかい)できるよう子供たちに御指導願えれば幸いです。
現在児童の教育についてはさまざまな点から問題にされていますが、こうしたとき私達は今一度私達の先祖がたどってきた生活をふりかえってみることも、大切なことではないかと思われます。
わたしたちは今、マスコミなどの発達で、日本の中の私、世界の中の私、宇宙のなかの私というように考えがちで、個人の力の無力さを痛感(つうかん)し、何のための私かという空(むな)しさがつきまといがちになっています。
でも考えてみますと私達は、とくに子供たちは、今住んでいるところが生活のすべてです。この私達が住んでいるところにとっての私達は、力のある大きな存在(そんざい)であるはずです。宇宙や世界に目を向けて、子供たちの夢を育てるのも良いことに違いありませんが、むしろ私達の生活の場である郷土をみつめ、郷土に対する誇(ほこ)りを持たせるとともに、その誇りを創造(そうぞう)しているという自信をうえつけることが、現実的な子供の夢を育てることにもつながると思われます。
それには、私達が住んでいる土地をよく知ることが大切ですが、その土地の歴史を知ることも心要な条件(じょうけん)となります。こうしたことからこの小冊子の刊行を考えたわけですが、今回は第一冊目として、皆さんが興味をもっている郷土の地名の由来(ゆらい)や民俗(みんぞく)を中心とした記事を収(おさ)めてみました。この記事の多くは今まで越谷市役所広報課で発行している広報こしがやの子供コーナーに連載(れんさい)した「越谷のれきし」を多少書き改めて収めたものです。これによって少しでも子供たちが、郷土の歴史を知るうえで、参考(さんこう)になれば幸いです。同時に私達も、故郷(ふるさと)の歴史を子供たちとともに学(まな)ぶとともに、子孫のために郷土の誇りうる歴史を創造しつつあるという自覚の上にたち、子供たちに大きな夢をもたせていくことを望んでおります。
なお本書を編集するにあたっての主な参考文献(ぶんけん)は『越谷市民俗資料』『越谷市金石資料集』『越谷つる市史』全六巻、『埼玉県地名誌』『越谷市の史蹟と伝説』『越谷市教育のあゆみ』「越ヶ谷瓜の蔓(つる)」「大沢猫の爪(つめ)」「大沢町古馬筥(こばばこ)」などです。