一 家ニ同居して和するものハ能忍ふに本つくと
然共忍を知て忍に処するの道ヲしらされは其失尤
甚し益忍ニ或は隠し蓄ふるの道有人ゟ神を犯
し很ること有人ニ是を耐え忍ひ怒を隠して
発せすかくの如きは一二度に不過若是を
忍ひ抑ゆる事数回なれは其堪忍の緒(イトクチ)きれて
怒の発する事洪水の堤を截るか如し遏(トゝメ)難きの
勢成へし是ハ唯忍を知りて忍ニ処する道を知らさる也
然は忍の道ハ唯人の犯しふるしを神心ゟ自ら解き
胸腔の間に蓄へぬ様にするを優れりとす若人ゟ神を犯
さは先自ら思わんにハ是ハ其人の不思也其人の知る事
無也又其たま/\失誤[しをち/あやまち]也或ハ其人の着量せまく
見る所小也とかく心に済せは很(モト)るもの数度に及と雖
胸中ハ自ら泰然として怒を蓄へす平和なるへし
是忍に処する要道ニして如此成は忍の効言大成也
唐の張公芸同居人周りニ忍の字ヲ百書て示したり