(七左衛門井出家蔵)
【表紙】
「近郷村名」
近郷村名
東の方ハ大相摸 真大山大聖不動尊 見田方南百飯嶋や 伊原の刈穂麦塚に ほして附なん千疋か 積し垣尾の柿木に 別府四条や八条と 雲井の名にや紛ふらん 篠葉の雨に青柳の 枝を流すか館野堀 伊草久く松の木に 千とせ波寄小作田に むれゐ遊ぶ鶴ヶ曾根
亦川辺行平沼を 吉河ともいふなミの 関や堰の伐木を 木売ば積る高富の 人や保村め世の中に 半割食も吉谷 また負か加藤か笹塚の 身を心の柳前 子孫つゝく彦乙や 彦成彦江彦倉を 建る槌音番匠目 谷口同庭堺木を こへて松戸か流山
西ハ谷中もえミ湛 神明の下荻嶋に 前ハ砂原西新井
後谷遠く小曾川と あゆむ末田に野嶋の里 日も高曾根と飯塚餉 食て立帰り三之宮 大竹袋山とや靡くらん須加の堰水筧の音 大戸答て大口や 大谷の気色増長ニ 夕日も春の長宮に 野懸心のうかれ気も 袖や袂に花摘の 誓ひ手向し慈恩寺の 浮ぶ出嶋に岩槻を松影遠く眺けり
南ハ七左槐新田 昔の路や大間野の 沼も田畑と清長し 藤兵衛迄も心いれ 皆新田と成とかや 森の幾つか藤八善 ちかゑ館野の百観音 戸塚も開け赤山の 原安行や窪と峯 慈林に巣籠る鳩ヶ谷宿
北に飛越し鷺後 花田に移す小林の 月ハ影能堀之上増林より増森と 木蔭弥重に重行 大吉の辻川崎や船戸の向畑なる 大杉大松繁りける 松伏の根の赤岩ハ
幅や広しと拾一軒 田嶋に洩る清水 末大川戸流寄 川藤波や金杉の 利根川深き野田の原
をはり
書習ふ 文字にこゝろを いれて見よ
よろつの宝 手のうちにあり