四九三 年不詳 世話字往来

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(七左衛井出家蔵)

 【表紙】

 「    井出千恵

  世話字往来   中」

面〻の家業の道を第一に、覚て後は其隙に学文素読謡舞鼓小鼓笛太鼓、茶の湯生花碁双六、将棊十炷香鞠弓馬柔術剣術歌連歌、料理俳諧琴胡弓、三弦尺八琵琶平家小唄浄瑠璃楽の笛、簫觱栗【篥】ニ至迄万の芸を嗜共、必夫に打込で家業疎略に忘なよ、宗祇法師の発句にも芸は身を助る程の不仕合、氏より育閑然に立居振舞気を留て、心に覚え利ぞ知ても不知風俗ぞよき増て我より年倍の人の為事悖まじ、問は当座の恥なれど根から不知ハ末代の恥と思て尋べし、客に相対受答無礼過言を考て麁相なき様立廻、畳の縁に躓な足音高く歩行まじ、戸障子襖明立は静に跡を顧て出入の時の品に寄嗽払する物ぞかし、身を高慢ず謙親に孝行主に忠、友達中ハ深切に仮にも悪言なき様に一家一門睦敷、我より下の者成と老たる会釈せよ、目上年上敬ハ是ぞ孝弟忠信の誠に人の道ぞかし、浮世の中の親心可愛〻と言儘に、子を育れバ気随にて後ハ我儘無理言に成は御【下欠】