四九五 年不詳 俳句集

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(「砂原松沢家文書」市史編さん室蔵)

   春の雨

○ ものゝ香の 傘にこほれり 春の雨  蜃飛

○ 九重に 降て静し はるの雨     蜃飛

○ 春雨や 寝むたい音の 大豆太鞁   貫之

五 春雨や 咄しのすきな 按摩とり   同

○ 素顔なる 人も美し 春の雨     同

五 春雨や 草鞋作の 茶にあきる    同

○ 蕪坂 から笠着たり はるの雨    寥阿

○ 【(欄外注記)ヌキ】ぬれながら 咄して行や 春の雨 同

五 あ□めの 琴を作らせん 春の雨   同

○ 松の雫と明けるよ 春の雨      同

五 黒もしの 忽こほすや 春の雨    鉄丸

五 春雨や にけなき顔の 辻談義    同

五 鶴の羽 虫ふるふや 春の雨     春圃

五 春雨の 雫もし【せ】わし 松並木  雪梅

五 夜咄しの 春や雨添ふ 二三日    同

五 春雨や 女斗の 茶の湯事      雪梅

五 春雨や 晴て野こゝろ 不二のいろ  雪茶

五 春雨や 廓の夢を 物語り      干風

○ 【(欄外注記)ヌキ】春の雨 暮そうにして しどけなし 斗雪

五 ひと霞 立て明にけり 春の雨    同

五 斧の本 色研出しぬ 春の雨     同

   猫の恋

○ つく/\と 水見て居るよ 猫の妻  蜃飛

○ 【(欄外注記)ヌキ】猫の恋 背て月の 伏るかな 寥阿

五 耽猫の 更てやうつほ もの語り   米夫

五 猫の恋 隣の壁に 月の洩る     鉄丸

○ 【(欄外注記)ヌキ】絶かねて 犬の飯喰ふ 女猫かな 雲梅

五 やもめ烏になふられる 猫の恋    干風

    椿

○ 上土の 干かたまりぬ 赤椿     蜃飛

五 負ふた子の 顔に咲けり 散椿    貫之

〇 赤椿 散ぬ顔して 咲きにけり    同

○ 【(欄外注記)六印】鐘そつと つけよ椿ハ 散ものを【(欄外注記)おつるもの】 貫之

五 糸をとる 庭やほろ/\ 椿散る   寥阿

五 雨されし 道陸神や 山椿      鉄丸

○ 赤椿 川むかへまて 日のあたる   春圃

五 晩鐘を 二つこらへて 椿かな    雪梅

○ 【(欄外注記)ヌキ】落してハ 鳥の見ている 椿かな 斗雪

○ 菓子売の 休んて居るや 藪椿    斗雪

○ 【(欄外注記)ヌキ】藪椿 風呂の捨湯の 流れけり 同

五 六斎の 市立里よ 白つはき     同

    霞

○ 山里や 霞払るる 朝箒       吐颿

五 潜りぬけたらハ滝あらん 夕霞    斗雪

○ 鳥のあふらの田に浮て 夕かすむ   吐颿

五 霞なから 舟漕人や 夕暮る     双井

○ 朝霞 から落て来る 烏かな     蜃飛

五 大木會や 霞かねたる 水の音    吐颿

○ 梅さくや 匂いきたる 五年味噌   斗雪

○ 夕風の 吹もなくさて 野梅かな   吐颿

五 梅見舟 薫る一筋 流れけり     斗雪

五 一りんは ほめなくしけり 梅の花  牛出

○ 梅に雨 香に□るかと 夕暮る    吐颿

五 ちる梅の 人によこれぬ 真芝かな  吐颿

○ 梅さくや 箕に撰て居る あられ米  双井

五 うめの花 垣結ふ人に こほれけり  同

○ □に雨 影鶯の 近さかな      吐颿

五 鶯や 朝飯過の ひとつ家      雪茶

○ 半蔀や 飼鶯と うくひすと     吐颿

○ 鶯や 雑水をこほす 田のひくミ   蜃飛

五 鶯に ふるひし五鬼の 頭巾かな   吐颿

五 鶯に 干す傘の 雫かな       斗雪

○ 春雨や 貝うち喰て 洲の烏     吐颿

○ 雨水に 春も淋しき 田つらかな   吐颿

五 麓から 雨もつ馬よ 春の雨     双井

五 春雨や 青く聞ゆる 鶴の声     吐颿

○ 茶の殼の 小川流れつ 春の雨    双井

○ されはとて 紫ならす 春の雨    蜃飛

五 すりわさひ 鉄の匂ひも 春寒し   吐颿

五 玄関に 文字書灰の 余寒かな    井□

五 蓮堀の 舟のけふりの 余寒かな   吐颿

ヌキ 烏のあふらの田に浮て 夕かすむ  吐颿

ヌキ 梅さくや 箕にひろひいる こほれ米 双井

ヌキ 春雨や 貝うち喰て 洲の千鳥   吐颿

   春の月

○ 春の夜を 絵にかゝはやな 松の月  松泰

五 梅植る 一畝ハ持てり 春の月    斗雪

○ 浅井汲む 人の濡けり 春の月    魯洲

○ 春の月 ほから/\と 杉のほる   双井

○ 折安い のも春ならめ 山【初】わらひ 斗雪

○ 早わらひや ひと摑ミツゝ 雨薫る  双井

五 早わらひや 手に砂の寄る 春日和  松泰

五 日のくれや わらひの灰汁の 土にしむ吐颿

○ また春も 痩てわらひの はしめかな 斗雪

○ 柳見て 雀の脛のす 畦間かな    魯洲

○ 雨晴や 柳の居る翁の碑       双井

○ 雷の きざしや柳 芽を含む     吐颿

○ 夕柳 湯風呂のせんハ 抜にけり   吐颿

○ 柳から 旭のけふる 曠野かな    斗雪

五 ほろ/\と 田の土こわし さし柳  魯洲

○ 如月や 寒き中より 松の月     吐颿

○ きさらきや 匂ひの疎き 山わさび  魯洲

五 月人に 添ふて如月 半かな     斗雪

○ 飯すゝむ 日や如月の 月半     魯洲

五 如月や 酢蔵から出る 人の顔    蜃飛

○ 春寒し /\と僕か 毛臑かな    吐颿

○ うハ岸を放れぬ 春の寒かな     蜃飛

○ 飼桶を 見て鳴馬や 春の雪     双井

○ 降忘れけり春雪の 水の月      吐颿

○ 樹〻たらぬ 里ハ見へずよ 春の雪  斗雪

○ 春雪や 泊り烏の ひくふ行     双井

ヌキ 春の月 ほから/\と 杉延る   双井

ヌキ 早わらひや ひと摑つゝ 雨薫る  同

ヌキ 春寒し /\と僕が毛臑かな    吐颿

ヌキ 飼桶を 見てなく馬や 春の雪   双井

ヌキ 樹〻足らぬ 里ハ見へすよ 春の雪 斗雪

五  折安いのも 春ならぬ 初わらび  同

五  飯すゝむ 日や如月の 月半    魯洲

六 印 春の雪 泊り烏の ひくふ行   双井