(「砂原松沢家文書」市史編さん室蔵)
春の雨
○ ものゝ香の 傘にこほれり 春の雨 蜃飛
○ 九重に 降て静し はるの雨 蜃飛
○ 春雨や 寝むたい音の 大豆太鞁 貫之
五 春雨や 咄しのすきな 按摩とり 同
○ 素顔なる 人も美し 春の雨 同
五 春雨や 草鞋作の 茶にあきる 同
○ 蕪坂 から笠着たり はるの雨 寥阿
○ 【(欄外注記)ヌキ】ぬれながら 咄して行や 春の雨 同
五 あ□めの 琴を作らせん 春の雨 同
○ 松の雫と明けるよ 春の雨 同
五 黒もしの 忽こほすや 春の雨 鉄丸
五 春雨や にけなき顔の 辻談義 同
五 鶴の羽 虫ふるふや 春の雨 春圃
五 春雨の 雫もし【せ】わし 松並木 雪梅
五 夜咄しの 春や雨添ふ 二三日 同
五 春雨や 女斗の 茶の湯事 雪梅
五 春雨や 晴て野こゝろ 不二のいろ 雪茶
五 春雨や 廓の夢を 物語り 干風
○ 【(欄外注記)ヌキ】春の雨 暮そうにして しどけなし 斗雪
五 ひと霞 立て明にけり 春の雨 同
五 斧の本 色研出しぬ 春の雨 同
猫の恋
○ つく/\と 水見て居るよ 猫の妻 蜃飛
○ 【(欄外注記)ヌキ】猫の恋 背て月の 伏るかな 寥阿
五 耽猫の 更てやうつほ もの語り 米夫
五 猫の恋 隣の壁に 月の洩る 鉄丸
○ 【(欄外注記)ヌキ】絶かねて 犬の飯喰ふ 女猫かな 雲梅
五 やもめ烏になふられる 猫の恋 干風
椿
○ 上土の 干かたまりぬ 赤椿 蜃飛
五 負ふた子の 顔に咲けり 散椿 貫之
〇 赤椿 散ぬ顔して 咲きにけり 同
○ 【(欄外注記)六印】鐘そつと つけよ椿ハ 散ものを【(欄外注記)おつるもの】 貫之
五 糸をとる 庭やほろ/\ 椿散る 寥阿
五 雨されし 道陸神や 山椿 鉄丸
○ 赤椿 川むかへまて 日のあたる 春圃
五 晩鐘を 二つこらへて 椿かな 雪梅
○ 【(欄外注記)ヌキ】落してハ 鳥の見ている 椿かな 斗雪
○ 菓子売の 休んて居るや 藪椿 斗雪
○ 【(欄外注記)ヌキ】藪椿 風呂の捨湯の 流れけり 同
五 六斎の 市立里よ 白つはき 同
霞
○ 山里や 霞払るる 朝箒 吐颿
五 潜りぬけたらハ滝あらん 夕霞 斗雪
○ 鳥のあふらの田に浮て 夕かすむ 吐颿
五 霞なから 舟漕人や 夕暮る 双井
○ 朝霞 から落て来る 烏かな 蜃飛
五 大木會や 霞かねたる 水の音 吐颿
○ 梅さくや 匂いきたる 五年味噌 斗雪
○ 夕風の 吹もなくさて 野梅かな 吐颿
五 梅見舟 薫る一筋 流れけり 斗雪
五 一りんは ほめなくしけり 梅の花 牛出
○ 梅に雨 香に□るかと 夕暮る 吐颿
五 ちる梅の 人によこれぬ 真芝かな 吐颿
○ 梅さくや 箕に撰て居る あられ米 双井
五 うめの花 垣結ふ人に こほれけり 同
○ □に雨 影鶯の 近さかな 吐颿
五 鶯や 朝飯過の ひとつ家 雪茶
○ 半蔀や 飼鶯と うくひすと 吐颿
○ 鶯や 雑水をこほす 田のひくミ 蜃飛
五 鶯に ふるひし五鬼の 頭巾かな 吐颿
五 鶯に 干す傘の 雫かな 斗雪
○ 春雨や 貝うち喰て 洲の烏 吐颿
○ 雨水に 春も淋しき 田つらかな 吐颿
五 麓から 雨もつ馬よ 春の雨 双井
五 春雨や 青く聞ゆる 鶴の声 吐颿
○ 茶の殼の 小川流れつ 春の雨 双井
○ されはとて 紫ならす 春の雨 蜃飛
五 すりわさひ 鉄の匂ひも 春寒し 吐颿
五 玄関に 文字書灰の 余寒かな 井□
五 蓮堀の 舟のけふりの 余寒かな 吐颿
ヌキ 烏のあふらの田に浮て 夕かすむ 吐颿
ヌキ 梅さくや 箕にひろひいる こほれ米 双井
ヌキ 春雨や 貝うち喰て 洲の千鳥 吐颿
春の月
○ 春の夜を 絵にかゝはやな 松の月 松泰
五 梅植る 一畝ハ持てり 春の月 斗雪
○ 浅井汲む 人の濡けり 春の月 魯洲
○ 春の月 ほから/\と 杉のほる 双井
○ 折安い のも春ならめ 山【初】わらひ 斗雪
○ 早わらひや ひと摑ミツゝ 雨薫る 双井
五 早わらひや 手に砂の寄る 春日和 松泰
五 日のくれや わらひの灰汁の 土にしむ吐颿
○ また春も 痩てわらひの はしめかな 斗雪
○ 柳見て 雀の脛のす 畦間かな 魯洲
○ 雨晴や 柳の居る翁の碑 双井
○ 雷の きざしや柳 芽を含む 吐颿
○ 夕柳 湯風呂のせんハ 抜にけり 吐颿
○ 柳から 旭のけふる 曠野かな 斗雪
五 ほろ/\と 田の土こわし さし柳 魯洲
○ 如月や 寒き中より 松の月 吐颿
○ きさらきや 匂ひの疎き 山わさび 魯洲
五 月人に 添ふて如月 半かな 斗雪
○ 飯すゝむ 日や如月の 月半 魯洲
五 如月や 酢蔵から出る 人の顔 蜃飛
○ 春寒し /\と僕か 毛臑かな 吐颿
○ うハ岸を放れぬ 春の寒かな 蜃飛
○ 飼桶を 見て鳴馬や 春の雪 双井
○ 降忘れけり春雪の 水の月 吐颿
○ 樹〻たらぬ 里ハ見へずよ 春の雪 斗雪
○ 春雪や 泊り烏の ひくふ行 双井
ヌキ 春の月 ほから/\と 杉延る 双井
ヌキ 早わらひや ひと摑つゝ 雨薫る 同
ヌキ 春寒し /\と僕が毛臑かな 吐颿
ヌキ 飼桶を 見てなく馬や 春の雪 双井
ヌキ 樹〻足らぬ 里ハ見へすよ 春の雪 斗雪
五 折安いのも 春ならぬ 初わらび 同
五 飯すゝむ 日や如月の 月半 魯洲
六 印 春の雪 泊り烏の ひくふ行 双井