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土地評価作業

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 土地の買収は当初順調にスタートしたが、田畑家屋敷を売って移住する住民にとっては容易なことではなかった。買収予定地には田畑のみでなく、寺院・神社・墓地なども含まれ、そのうえ小作人の転業問題もあり、事情は複雑であった。そのため土地の評価額を一律に決定することはできなかった。一方、七月十七日から承諾書調印済みの区域に久原測量隊の測量が開始された。七月末林県知事をはじめ県内務部長・県土木課長の出席を得て周慶寺で協議会が開かれた。その席上、土地評価委員長笹井幸一郎県土木課長が提示した土地評価方法は次のとおりである。①畑は五等、田は四等に分ける。②現地目が畑であっても山林となっている所は山林とみる。③家のない宅地は宅地とみる。④県道に沿った畑地は宅地予定地として宅地一等とみる。⑤県道に沿った宅地は一等とする。⑥宅地にはさまれた畑は宅地とする。⑦田地にはさまれた畑は田地とする、というものであった。この評価は現況を重視した評価をしている点に注目されるが、これで決定されたわけではなく、その後も評議委員会で討議が重ねられた(「久原工場設置一件」)。
 表3は買収対象者数と承諾未調印者数の推移を示した。日別にガリ印刷された表が作ってあるから、日毎に各町村や関係者に配布されたものと思われ、それだけ日々の関心事であった。直接の買収事務は下松町役場吏員の仕事であり、「臨時非常ナル事務ヲ極メ七月以降四ケ月間ハ吏員総テ夜間勤務ヲ続行整理」(「下松町事務報告」)するような状況であった。久原房之助は「一人の未調印者があっても事業に着手しない」(同)と表明し、地元に強い態度を示した。着手させるためには地主全員の調印が必要であり豊井小学校で訓示会を開いたり、都濃郡長谷をも動員して地主へ出張説諭が行われた。
表3 買収対象者数と承諾書未調印者数(1917年)
町村名8月7日8月13日8月16日8月18日8月21日8月24日
人 人人 人人 人人 人人 人人 人
下松町469(5)469(5)469(5)470(6)471(5)475(0)
397( 84)401( 66)401( 36)401( 29)401( 28)401(7)
末武南村122(4)122(2)122(2)123(1)123(1)123(0)
末武北村 19(0) 19(0) 19(0) 19(0) 19(0) 19(0)
107( 35)101( 20)102( 19)102( 19)102( 19)102(3)
太華村 39(0) 39(0) 39(0) 39(0) 39(0) 39(0)
 51( 18) 51(7) 51(7) 51(7) 51(7) 51(4)
久保村
久米村 55( 12) 70( 15) 70( 11) 70( 11) 73(6) 73(2)
649(9)649(7)649(7)651(7)652(6)656(0)
610(149)623(108)624( 73)624( 66)627( 60)627( 16)
1. 「末武北村久原工場設置一件」による
2. ( )内は未調印者数 上段は第1回用地 下段は増補地

 八月下旬になって第一回用地の買収作業は目途がつき、八月二十四日に第一回用地については未調印者がなくなったが、増補地にはなお根強い反対があった。