一九三六年六月、政府は下松地域の工業的な発展の見通しを得たため、都市計画法第二条第二項の特例をもって、都濃郡下の下松町・末武南村・花岡村の三カ町村を都市計画区域に指定することとし、同年八月には山口県を通じて、各町村の意見を聴取した。
とくに一市町村の区域を越えて、三カ町村合併による都市計画区域指定の理由として、前年に行われた国勢調査の結果が基本にされ、次のような項目があげられている。
すなわち、まず①下松町の人口は一万二六八八人で、一人当りの利用地面積は約一〇四坪に当る。②過去五か年間の人口増加率は、一か年平均四・五パーセントの高率を示している。③工業地として将来ますます膨張発展の趨勢にあることの三点が指摘され、つぎに①末武南村は、下松町と徳山都市計画区域に介在し、下松町と人家が連たんしている。②花岡村は、国道が貫通し、国鉄の停車場を有していることの二点が加えられ、さらに、都市計画区域を区画するに当たっては、下松町域にのみ局限することなく、交通・経済上で、相互に密接な関係にある区域を包含することを適当と判断した、というものであった(「昭和十一年末武南村庶務一件」)。
このような政府の方針に対応して、三カ町村の議会は、八月から九月にかけて、それぞれ異議のないことを議決・答申したが、末武南村にあっては、「但シ、本村ニ密接ノ関係ニアル花岡村ヲ包含セザル区域ヲ以テ計画樹立ノ場合ハ、同意難相成候」(同)と条件を付けて、あくまで花岡村との同一歩調を求めている。
このような三カ町村を一体とする都市計画区域の指定告示を契機に、三六年八月には、都市計画法の姉妹法としての市街地建築物法の適用も求められ、交通・衛生・保安・経済など、各分野における都市問題を解決する必要性が一般的に認識されるようになり、市制施行の機運が盛り上がることになった。