一九三八年、下松町と久保・花岡・末武南村の四カ町村は、合併による市制施行を検討するため、それぞれの町村勢を調査して、「下松町外三ケ村合併参考資料」を作成した。その内容は、「世帯数及人口」「歳出総額及主ナル経費」「小学校費」「財産及負債」「課税標準額」「町村税」についての統計表であり、合併直前の各町村勢を比較一覧するものであった。このうち、四カ町村の世帯数と人口については、表3に掲げた通り、一九三〇年と三五年の国勢調査で比較してみると、下松町と末武南村の増加が著しく、久保村の停滞が特徴的であった。

　また、四カ町村の財政状況について、表4と表5に示したとおり、それぞれ一戸当たりの町村税負担額と歳出額で比較すると、歳入中に営業収益税附加税や雑種税附加税の比率の高かった下松町の場合が、最も小さい特別税戸数割の負担額で、最も大きい歳出額の恩恵を享受していたことが判明する。逆に、営業収益税附加税や雑種税附加税の占める割合の小さかった久保村が、最も大きい特別税戸数割の負担額になっており、このような三カ村の財政事情が積極的に下松町との町村合併を希望する背景になっていたのである。


　さらに、四カ町村の財産と負債については、表6に示したとおり、久保村の所有する土地の広さや、末武南村の造林面積の大きさに特徴があり、また下松町と末武南村は負債を抱え、四カ町村はそれぞれ基本財産や積立金に対する積み戻し未済金額を残していた。