一九三二年九月、大阪鉄工所笠戸島工場を前身とする笠戸船渠株式会社は、江之浦に位置する笠戸島船渠笠戸工場を買収し、本社を神戸市に置き、資本金一〇〇万円で、船舶の新造と修造、あるいは建築鉄骨や橋梁の製造などを開始した。この当時は、満州事変勃発以後の大陸進出によって、日本経済が回復し始めていた時期でもあり、また、江之浦が造船所に適した入江で、地盤も堅牢な好条件に恵まれていたことから、再建後の笠戸ドックは業績を伸ばし、三八年ごろには、第一ドック一万二〇〇〇トン、第二ドック六五〇〇トンの造船工場となり、さらに翌年十月には、工場用地四四五〇坪の埋立拡張を願い出て、三九年の市制施行当時の笠戸ドックの従業員は、約七〇〇人に達していた。
　また江之浦には、笠戸ドックに附属する施設として、迎賓クラブや船員クラブ、あるいは浴場などがあり、市街地の戸数も二〇〇戸を越えており、三三年には、深浦尋常小学校の分教場も開設されている。

大阪鉄工所笠戸島船渠
(絵ハガキ「下松名勝」より)


笠戸船渠株式会社第1号ドック(1941年ごろ)