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自治体警察と消防署

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 地方行政改革の中でも、自治体警察の創設と消防の発足は画期的なものであった。警察法が一九四七年公布され、市には独立の自治体警察設置が義務づけられ、町村の警察業務は県単位で組織した国家地方警察が行うという二系統の警察制度が発足した。この制度は市に公安委員会を設置して自治体警察の運営管理を行い、市長は下松市警察の財政管理についてのみ責任と権限があるというものであった。市は公安委員会設置のため、翌四八年三月市議会の同意のもとに三名の公安委員を任命し、続いて「自治体警察に関する条例」を制定し、下松市警察署を汐見町に設置した。下松市警察機構は、警察長(署長兼務)のもとに署員、事務職員七〇名で組織した。
 自治体警察は中央集権を廃して地方自治に重点を置く戦後民主化改革の一つであったが、日本の国情に合致せず、警察力の低下という弊害が現れた。そのため、五四年六月廃止となり、翌七月山口県警察本部が統合設置され、下松警察署が新設された。
 また消火・防災のため下松市に設置されていた消防組は、戦時中、国防体制整備のため、警防団令によって下松警防団と称し、警察署長指揮のもとに、消防業務に加え、防空・戦意高揚の指揮・指導を行った。四七年四月「警防団令」が廃止され、「消防団令」が公布された。下松市では七月、下松市警防団を改組して、下松市消防団(団長藤井龍男)を発足させた。翌年三月「消防組織法」の施行で消防は警察機構から完全に分離し、市長が消防の最高責任者で、市長は消防長を任命し、消防長は消防署及び消防団を所轄し、指導、指揮することとなった。市では奉仕団体である消防団と、新たに設置する消防署の融和を図るため、署の設置を急がず、消防団が産みの親となり、発展して消防署を設置するという方法をとった。
 四九年十月消防団の編成替えを行い、機動分団、整備工作分団を中心に豊井・末武・花岡・久保・笠戸島の各分団とし、機動・整備工作分団に常勤団員を配置し、消防署の設置準備を整えた。続いて翌年三月、初代消防長に下松市助役高田秀次(兼務)が就任、四月下松市消防署は常勤消防団員をもって組織し発足した。市長の融和・協調をもととした消防行政が、その後の下松消防署・消防団の堅実な発展の基礎となった。