ビューア該当ページ

農地改革

838 ~ 839 / 1124ページ
 戦後民主化に向けての諸改革のうち、特筆すべき改革は農地改革で、農地の所有関係に大変革が行われた。戦後まもなく連合軍総司令部は、日本の農村社会に根強く残る封建制の核心を地主・小作制度とみ、自作農創設のため農地改革に着手することを政府に指令した。
 政府もまた、食糧危機を打開し、戦後の経済復興のために土地制度の改革を必要とし、四五年十二月「農地調整法」を改正施行し、農地制度の改革に着手した。しかし、地主の保有農地面積を五町歩(山口県では四町二反)まで認め、農地の買収・譲渡が地主と小作人の直接折衝のため、義理人情が絡み、また不正も行われ、自作農創設の主旨にそわないものもあり、農地改革は低調であった。
 これを不満とした連合軍総司令部は、対日理事会の決議として、より強力な改革措置をとるように日本政府に勧告した。政府は四六年十月、「自作農創設特別措置法」と「農地調整法」の再改正を行い、農地改革を強力に推進することとした。改正の要点は、つぎのとおりである。
(一) 農地改革該当農地は、市町村農地委員会の買収、売渡し計画により、政府が買収、売渡しを行う。
(二) 農地の買収、売渡し価格は、地租法により賃貸価格があるときは、田にあっては当該賃貸価格の四〇倍(反当たり五〇〇-一〇〇〇円程度)、畑にあっては賃貸価格の四八倍(反当たり三〇〇-六〇〇円程度)の範囲内で定める。
(三) 買収の対象としない農地は、都府県平均在村地主の場合、保有小作地面積はおおむね一町歩、耕作者で自作・小作地合計でおおむね三町歩とする。
(四) 地主が小作地を取り上げようとする場合は、農地委員会の承認と知事の認可を必要とする。
(五) 農地以外の農業生産設置(溜池・採草木地・宅地・建物等)も買収・売渡しの対象とする。
(六) 小作料は金納とし、その最高限度を定め、かつ小作契約は文書によることにして小作人の耕地権を保護する。
(七) 開拓適地も政府が強制的に買収し、入植耕地拡大希望者に分譲する。
(八) 市町村農地委員会の構成を地主三人、自作二人、小作五人に改め、小作人の発言権を強化する。
(九) 市町村に二つ以上の地区農地委員会を置くことが認められ、同一市町村でも地区が異なれば不在地主とする。