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市庁舎の建設

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 一九四九年は、市議会議員のリコール、市内各企業の経営合理化など、下松市にとって異常な年であったが、市制十周年に当たっていた。市・市議会で協議の結果、十一月三日の記念行事とは別に、記念事業として、手狭な市庁舎の改築、文化施設(図書館・公民館)の建設が取り上げられた。
 このとき、前年八月解散した下松市農業会の資産を配分処理する下松市農業会資産処理委員会(市内七農業協同組合で結成)から、農業会資産の買取りについて、市に打診があった。市では市制施行時の付帯条件である「市役所を市の中心に近い位置に設置する」という条件に近いこと、移転後の旧市庁舎は図書館・公民館として活用できることなど、一石二鳥の施策として、ただちに市議会に諮り、買収委員会を設置、四九年三月買収申込書を各農協に送り、買収交渉に入った。
 各農協では理事会・総会を開き審議の結果、下松農協はこの土地を農協の移転地としたいとして難色を示したが、他の農協は市役所の位置に最適として賛意を表した。市は三月買収についての市議会の議決を得、価格・買収条件の詰めを行うとともに下松農協を説得して、五月、価格一五〇万円(内五〇万円即金・残額一〇〇万円は三カ年年賦支払・年利八分)で下松市農業会資産処理委員会と買収契約を完了した。
 当時の市財政は新制中学校の建設など新規事業に追われ苦しかったが、市行政が発展して栄町の市庁舎では狭隘のため、新行政に対処する機構改革もできず、庁舎の建設は急を要した。そこで市庁舎建設起債の確保を進め、五〇年三月起債額四〇〇万円の見通しを得た。しかし、市議会議員リコール成立によって五〇年度の予算議決が得られず、暫定予算となり、市庁舎建設事業も市長専決処分(新市議会五月承認)で着手することとした。四月一期工事(本館棟)に着工し、八月完工、続いて二期工事(東西棟)を施工して、翌五一年三月市庁舎建設事業は完了し、市役所を移転した。
 新市庁舎は、コの字型、事業費九二一万円、建物延べ面積八九六坪、木造二階建てモルタル塗、屋根S型洋瓦葺で、当時としては瀟洒な市民の誇りとする建物であった。旧庁舎は公民館、図書館として改造を行い、市民の要望にこたえた。