財政再建準用団体の方針が定まった一九七六年八月、中国電力から下松火力発電所三号機(毎時七〇万キロワット)の増設工事を行いたいと、市に申入れがあった。市は既設の一、二号機の公害防止協定より、一層厳しい内容(一、二号機排出硫黄分〇・〇二二ミリグラムを三号機〇・〇二に改定)を含む公害防止協定を、県、市、中電三者で締結することを条件として、増設に同意する旨回答した。しかし、産業公害に対する市民の関心は高く、市議会に増設反対の請願書が提出された。市議会は翌年三月この請願を否決して、市と中国電力が締結する公害防止協定を議決した。これによって中国電力は七九年運転開始を目標に増設工事に着手した。
発電所の増設は下松市にとって八〇年度から八二年度の三カ年だけでも二〇億円の固定資産税収入が計上でき、財政再建期間の短縮と財政構造の健全化を可能とさせた。さらに、電源交付金五億六〇〇〇万円(福祉向上施設整備補助)が見込まれ、市の多年の懸案であった公民館の新設、老人集会所の新設、図書館の改築、市道の整備等の生活環境整備、社会福祉施設の充実が、再建期間中にもかかわらず一挙に促進できることとなった。
市は財政再建に入ると同時に、自治省の指導のもとに各種補助金の整理と大幅削減を実施した。このため補助を約束していた下松商工会議所の会館新設、福祉法人松星苑建設等は頓挫し、また教育団体(二三)、福祉団体(一〇)等は活動資金が不足して活発な活動に支障をきたした。
この対策として藤田市長、国居市議会議長はひそかに中国電力に協力を依頼した。七六年十二月中国電力から市に対し、下松火力発電所三号機建設に当たっての協力に感謝し、三億円を寄付するので財団法人を設立し教育福祉活動に当ててほしいとの申し出があった。早速関係者で協議し、財団法人の設立準備、手続を進め、翌年三月山口県知事の設立認可があり、「財団法人下松を明るくする会」を設立し、寄附金を受け入れた。しかし、三月市議会において、議会に通知されていない、唐突で不明朗な案件として紛糾し、ついに議長不信任議決にまで発展したが、四月の議長選挙に国居議長が再選され、市議会の紛糾も終息した。
この寄付金は「下松を明るくする会」を通じ、下松商工会議所に三〇〇〇万円、松星苑に一〇〇〇万円が市の肩替りとして拠出され、残り二億六〇〇〇万円は財政再建期間中、社会福祉団体、教育団体の活動資金として有効適切に使用され、財政再建前以上に活発な活動を展開し、明るい下松市の実現に大きく寄与した。