そこで市は同年四月から基礎調査(埋立地の地盤調査、環境に及ぼす影響調査、気象、潮流調査、模型実験等)を開始し、九月事業可能の見通しを得て、市議会に埋立事業の概要と市事業として施工することを発表した。市は公有水面埋立免許のための諸業務を精力的に進め、免許が確実となったので、同年十二月埋立事業局を設置して、恋ケ浜臨海工業用地埋立事業を開始した。市議会も埋立事業調査特別委員会を設置して調査を始め、また恋ケ浜地区など利害関係者との調整に当たった。
翌年五月山口県知事から埋立免許があり、翌月埋立面積一三五万平方メートル、事業費七九億円という大埋立工事(図1)に着工した。同日日立製作所(二八万二二〇三平方メートル)、日本石油精製(九三万九八三二平方メートル)は下松市とそれぞれ土地売買契約を締結した。市はほかに中小企業団地(九万五七七五平方メートル)を造成して、事業完了後、市の選定企業に譲渡することとした。
事業は順調に進み、着工以来三年目の七四年六月末、埋立造成工事を完了、十月竣工認可を得て、日立製作所、日本石油精製に土地の引渡しを行い、大事業は完了した。
図1 下松市恋ケ浜臨海工業用地造成事業
表18 恋ケ浜埋立工事内容 |
位 置 | 下松市大字東豊井字恋ケ浜地先 |
着 工 | 昭和46年6月16日 |
完成予定 | 昭和49年6月30日 |
埋立面積 | 1・2・3工区 1,317,810m2(約 399,000坪) |
5工区の1 10,820m2(約3,000坪) | |
5工区の2 23,559m2(約7,000坪) | |
埋立計画高 | 1・2・3工区=+5.0m 5工区の1・2=+4.0m |
埋立土量 | 1・2・3工区=13,985,550m3 5工区の1=30,167m3 |
5工区の2=94,769m3 | |
護岸延長 | 1・2・3工区=2,590.70m 5工区の1=321m |
5工区の2=362m | |
護岸構造 | 捨石とケーソンの混成 |
総事業費 | 約79億円 |
設計監理 | 下松市埋立事業局 KK日建設計 |
施 工 | ・護岸の部 鹿島建設KK ・埋立の部 五洋建設KK |
日立は工場拡張、日精は日産二〇万バーレルの大製油所の建設がほぼ確定していたので、市は工業用地造成中二社と公害防止協定、環境保全に関する協定を締結するなど、進出工場の公害防止、環境保全に万全を期した。
この二大企業の進出で、下松市の飛躍が期待されたが、同年石油危機インフレの抑制策がとられ、景気は停滞して進出工場の着工時期は不明確となり、下松市は大打撃を受けることとなった。