戦後、商品流通は統制機関の手で行い、厳しい物価統制と物資の配給を行ったが、物資はヤミに流れるものが多く正常な商業活動が行われなかった。一九四八年ごろから、食糧を除きしだいに統制が解除され、商業活動の場は広くなっていった。
　下松市の商店街(二の宮町から大海町に至る市街地及び花岡)は戦災を受けず、老舗が並び、戦中・戦後の配給所からしだいに商業活動に入ったため、商業の近代化の面で立ち遅れることとなった。そこで下松商店街では、旧態から脱皮し、商店街として商業活動を活発にするため、商店の連帯化・近代化に取組み、顧客を誘致することとした。
　五一年十月、商業協同組合、下松ショップリーグを設立し、団結して近代化・活性化を進め、かなりの業績をあげることに成功した。さらに躍進するために、センターとして共同販売所の必要性を痛感し、五三年三月二五〇〇万円(出資金一〇〇万円、商工中金借入金二五〇〇万円)をもって共同販売所(大黒屋百貨店)の建設を計画した。
　同年六月商工中金が市による損失補償を貸出しの条件としたため、市議会は中小企業振興の見地に立って、損失補償という画期的議案を議決した。当時の市当局の商業発展に対する意気込みは「損失補償の諸問題以上に、下松市の商業を発展、盛んにして市民の幸福を図るということは、政治的に、行政的に、市当局あるいは市議会がどのように大所高所から事を考えて行くかということが重大である」という市議会議事録の内容からも伺い知ることができる。
　十二月商店街の核として鉄筋コンクリート造り三階建ての大黒屋百貨店がはなばなしく開店し、商店街の発展が期待された。しかし、共同販売所としての百貨店経営は、個人利益が優先し、団結もくずれ始め、債務の履行が進まないので、ショップリーグでは、株式会社大黒屋百貨店を設立し経営を委ね、ショップリーグは貸料で債務を償還することとした。
　この方法も諸般の悪条件が重なって、百貨店の経営は不振を続け、商工中金を始めとして債務不履行となり、五七年二月商工中金は市の善処を要望し、他の債権者も強硬で、返済延伸を許さなくなった。市は市議会とともに商工中金を始め各債務者と折衝を重ね、ついに市が表18の債務を年賦で支払い、協同組合下松ショップリーグ共同販売所(大黒屋百貨店)を買収することとなった。

　その後、建物はつるや会(出店者一四名)に賃貸され、物品販売店(百貨店、専門店、スーパー等)経営の買取り者を物色していたが、六四年三月市の方針に合う買手が現れ、二一八〇万円で売却した。しかし、この買手は市の意図に反して他に転売し、市議会や市民に物議を醸した。このように市は多額の財政支出をして、市民福祉のため商業の振興を図ろうとしたが、成果をあげることはできなかった。
　六五年下松橋上駅が完成し、六八年五月末、駅裏土地区画整理事業が完了(一、二工区)して下松ショッピングセンターが建設され、駅北部の商業がしだいに伸展して、下松の商業は鉄道を中心に南北に二分される形となった。
　下松市の商業の発展の推移は表19のとおりで、八五年には商店数九七二、従業員数四三一九人、年間販売額一二〇〇億円に達している。この状況をさらに発展させるため、市・商工会議所を中心に、市域内はもちろん、近隣地域の購買力が下松商店街に流れるよう、道路整備やバス路線の充実を図るとともに、八二年に策定した下松市広域商業診断を参考として、商店街の再開発、近代化事業が推進されつつある。