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旗岡団地と久保団地

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 一九六六年、下松市は周南工業整備特別地域の中核都市として発展を続けており、人口も累増して、宅地・住宅の需要が高まった。「安全・健康・便利・快適」を政治指針とする山中市長は、新市街地の北部丘陵地旗岡の住宅団地開発が政治指針に合致し、市民の住宅需要に対処し得るとして、県・市一体となって事業の進捗を図ることとした。
 翌年三月、三二ヘクタールの土地買収を終え、開発事業は山口県を施工主体として、基本・利用計画をたて、設計を進め、六八年一月着工した。途中、集中豪雨に見舞われるなど難工事となったが、七〇年三月竣工した。
 この団地造成事業の概要は、図6・表35のとおりで、特色としては、住環境が緑に包まれ、南面して日当たりが良く、そのうえ下松市街と笠戸湾が眺望できるという恵まれた環境であること、また市の中心部に近く、交通便利であること、団地内に店舗・幼稚園・診療所等の利用施設用地が確保されていることである。

図6 旗岡団地計画平面図

表35 旗岡住宅団地造成事業概要
造成用地名面 積摘 要
m2
公営住宅建設用地103,370建設予定戸数     1,274
分譲住宅建設用地57,861建売住宅予定戸数   195
共同施設用地10,600
公園用地60,169
道路用地47,379
下松バイパス・その他用地47,399
合 計326,778住宅建設予定戸数  1,469
総事業費957,699,000円

 七一年、下松市は日本石油精製、日立製作所の大拡張を前提とした恋ケ浜臨海工業用地の埋立工事を開始した。これによって下松市の大発展が期待され、大住宅地が必要となった。また周南地域全体にも旺盛な宅地需要が現れた。
 しかし、新都市計画法による市街化区域、市街化調整区域の決定と、開発行為指導要綱等の施行により、宅地開発は制約を受け、小規模民間住宅団地開発は困難となった。
 そこで、市は翌七二年久保地区に大型住宅団地の造成構想を練った。たまたま、山口県住宅供給公社から市に対して、建売分譲住宅建設用地斡旋の申入れがあり、協議と現地調査が進められた。その結果、切山、山田境一帯の丘陵地(一部耕地)で、山陽新幹線(北部)と岩徳線(南部)との間七三ヘクタールが候補地としてあげられた。
 この土地は約八五〇メートル正方形に近い形をしており、南に緩やかに傾斜して日照と眺望が良く、周辺は緑に囲まれ、また下松市街地から北に約六キロメートルの地域で、郊外住宅地として、開発に最適地であるとの結論に達した。
 同年十一月、公社は大規模な開発計画のため、日本住宅都市整備公団に対して技術援助を依頼した。公団・公社・市三者の開発調査・協議が進む中で、共同開発の合意が成立した。
 そこで翌七三年九月、三者間で久保団地造成基本事項覚書に調印し、用地買収を下松土地開発公社に委託して、七五年三月台帳面積五三・三五ヘクタール(公団三五・二八ヘクタール、公社一八・〇七ヘクタール)の土地買収を完了した。買収土地(図7)は山林六四パーセント、農地三六パーセントで、外に市有林一、七ヘクタールがあった。このとき、建設省山口工事事務所から、国道二号バイパス(花岡拡幅計画)を団地内南側岩徳線沿いに建設する申し出があり、了承した。

図7 久保団地造成施行前の状況

 こうして、農地転用・山口県の開発承認、開発基本計画、実施設計等開発の諸準備を進めたが、周南都市計画の変更(調整区域から市街化区域への変更)に時間を要し、ようやく七七年九月末、市街化区域に決定した。これにより久保住宅団地開発事業は、周南都市計画事業、久保土地区画整理事業、行政庁施行事業として施行が決まった。翌年市は久保住宅団地開発事務所を設置して、土地区画整理による団地造成事業を開始した。工事は順調に進み、八三年表36の全事業を完了して、七二・九ヘクタール、計画戸数一五四六戸という大住宅団地が誕生した。
表36 事業と事業費(公園、公社管理費を除く)
(単位:千円)
事 業 名事 業 概 要事 業 費
用地買収費公団352,908m2、県公社180,579m21,076,000
整 地340万3の土量処理により標高差30mのゆるやかな南向斜面団地とする2,567,843
道 路国道2号と団地を幹線 (12m) で結ぶ、団地内道路224,865mの築造533,537
排 水雨水、調整地により調整放流、汚水排水、全区画街路に汚水管埋設1,146,000
公園・緑地近隣公園1箇所、児童公園4箇所、北側、中央に緑地設置174,000
上 水 道久保配水池又は団地内配水池から自然流下方式562,000
ガ ス都市ガス (徳山市久米から団地まで6,330mの配管) 99,000
そ の 他調査設計、補償、仮設工事、付帯工事、分担金、事務費2,146,550
合 計8,304,930

財源内訳
事 業 別財 源 別金 額
千円
公共事業 (下水道、公園緑地、幹線道路)国庫補助金442,300
国道2号線花岡拡幅事業 (建設省) 公共施設管理者負担金400,000
開発者負担金住宅、都市整備公団負担金5,650,454
山口県住宅供給公社負担金1,804,176
下松市負担金8,000

 この新生住宅団地は、藤田市長が「東陽」と命名した。「東陽」とは一八八五年(明治十八)久保村が統合小学校開校のさい、久保村は都濃郡の東にあり、太陽の恵みを真先に受け、伸び伸びとたくましい子供に育って欲しいとの願いをこめて、名付られた由諸ある名称(後久保小学校と改称)である。東陽は図8のように、一丁目から六丁目まであり、事業完了と同時に完成宅地は表37により、住宅都市整備公団、山口県住宅供給公社、下松市に引き渡され、住宅用地の分譲、建売分譲住宅の建設が開始された。

図8 周南都市計画事業久保土地区画整理事業位置図
表37 住宅用地と計画人口
称  別地 積一戸当り地積計画戸数計画人口
住宅都市整備公団m2m2
集合住宅用地66,968.98108.83701,480
分譲住宅用地206,827.82277.67452,980
273,746.801,1154,460
山口県住宅供給公社用地89,689.61264.53391,356
下松市用地17,087.54274.662248
公益的施設用地40,917.07教育施設商業施設外30120
421,383.02 1,5466,184
道路、公園、緑地307,487.47
総面積728,870.49