わが国の経済は重工業を核とした経済成長の促進、国民所得倍増政策などにより、高度成長期を迎え、特に六三年の新産業都市、工業整備特別地域の指定が拍車をかけ、各所に大工業地帯が出現し、人口も集中することとなった。
このため、地方経済は活発化したが、大量の化石燃料と工業・家庭用水を使用することとなり、排ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんは大気を汚染し、工業・家庭排水中の窒素・燐は河川・海水を汚濁し、環境破壊を増進することとなった。
そこで国は、六七年八月「公害対策基本法」を制定し、事業者・国および地方公共団体の公害防止に関する責務を明確にし、公害防止に関する基本事項、公害の定義を定めた。つづいて「大気汚染防止法」、「水質汚濁防止法」、「海洋汚染防止法」、「騒音規制法」など一五の法律を改正または新設し、公害防止の徹底を図った。
山口県は七〇年十一月「公害防止条例」を施行し、公害防止地域の指定、規制値の決定を行い、市町村の指導・助言、企業の公害防止指導、排出規制を行うほか、環境測定(SO2連続測定器の設置とテレメーター化、水質測定)を指定地域、水域で開始した。同時に下松市も公害対策課を設置して、県の公害対策行政、環境測定を協力するとともに、市独自で環境測定を行い、また市内各企業と公害防止協定の締結を進め、厳しい排出規制を定め、住み良い環境の保全を図ることとした。
七〇年公害対策審議会条例を制定し、市長の諮問機関として、公害対策審議会(学識者八名、団体代表二〇名、企業代表六名、計三四名)を設置した。審議会は公害対策に関する基本事項、その他必要事項を調査・審議することを目的とした。重な調査、審議事項は、日石精を始め既存五企業との公害防止協定の諮問、清掃工場ほか新設、拡張企業の調査、公害防止計画、公害防止協定の諮問、下松市の環境状況と対策などである。さらに周南地域は国の第五次公害防止計画策定地域として、七三年七月計画策定が指示された。公害防止事業は当初七四年度から七八年度の五カ年計画で実施することとなっていたが、二度の延長が行われ現在に至っている。下松市の主な事業は、恋ケ浜緩衝緑地の造成、公共下水道の整備、廃棄物処理施設整備などである。