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水質汚濁と防止対策

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 六三年六月下松港内で赤潮が発生し、いけすの魚が斃死する現象が起こり、以後毎年のように夏期に赤潮が発生し、漁業関係者に大きな被害を与えた。当時赤潮の発生原因は解明されていなかったが、海水の汚濁によるのではないかといわれ、漁業関係者は市・企業に対して排水対策を強く要請した。
表13 降下ばいじん量 経年変化
(単位 トン/月/km2)
測 定 点1973
年度
 74
年度
 75
年度
 76
年度
 77
年度
 78
年度
 79
年度
 80
年度
 81
年度
 82
年度
 83
年度
 84
年度
 85
年度
12種住専末武中学校3.893.223.774.264.184.443.823.853.713.884.244.443.66
2下松高等学校3.442.843.723.843.963.633.693.562.602.562.982.882.62
3住 居江口アパート3.583.143.774.564.124.403.464.153.803.903.763.823.35
4近隣商業花岡農協4.354.003.854.143.993.973.974.094.013.914.184.263.58
5商 業下松市民会館3.693.814.403.933.683.983.883.542.972.933.463.732.91
6準 工 業西市日石アパート4.003.854.244.125.044.882.773.283.213.093.593.493.41
全 域 平 均3.893.473.964.134.154.163.633.743.393.393.723.763.26

 政府は七一年三月、赤潮発生原因は、工場排水、都市下水など陸上から流出する栄養塩類が関係していることを認め、六月、それまでの指定水域制の「公共用水域の水質に関する法律」および「工場排水等の規制に関する法律」を一本化して水質汚濁防止法を公布施行し、全国どの水域についても共通の規制を行うこととした。
 同年、徳山湾で水銀汚染魚問題が発生し、徳山市の漁民は湾内での漁獲を中止し、沖合または笠戸島周辺海域に出漁することとなった。このため下松市の漁民は魚価の低迷と乱獲による不漁という大きな痛手を被った。この水銀汚染問題は長期にわたったが、七九年ようやく鎮静化した。
 このように瀬戸内海の汚濁が進むため、その対策として国は七三年、瀬戸内海環境保全臨時措置法を施行し、七六年には同法を恒久法とした。また同時に水質汚濁防止法が改正され、総量規制となった。こうして発生源に対する規制対策は強まり、県の調査、監視体制も強化された。
 下松市は財政再建中であったが、家庭排水を浄化し、河川・海水の汚濁を防止するために下水道の整備・普及を進め、七八年四月、下水終末処理施設を建設して家庭排水の浄化を行った。また、市民を中心に川を愛する会が組織され、末武川・平田川・切戸川等の清掃美化が行われ、漁業関係者は海底、海岸清掃を行い、また燐洗剤の使用自粛を呼びかけるなど、市民挙げて環境美化運動が進められている。
 市内の海・河川の水質状況は、人の健康の保護に関する環境基準を達成しているが、生活環壊の保全に関する環境基準は、笠戸湾の水質汚濁COD(化学的酸素要求量)が表14のように年々低下し、環境基準をほぼ達成し、河川の水質汚濁BOD(生物化学的酸素要求量)は表15のように切戸川が下水道普及により低下し、最近ようやく環境基準値に達し、下水道無整備地域を流下する平田川、末武川は環境基準値を超えている現況である。
表14 水質汚濁状況(COD)
類型ABC
環境基準値2mg / L 以下3mg / L 以下8mg / L 以下
1979年2.12.12.2
802.32.22.0
811.71.71.8
821.51.51.6
831.51.51.4
841.41.41.5
851.51.71.7
値は、各類型の環境基準点の平均値


笠戸湾・光水域調査地点図(下松地方)

表15 水質汚濁状況(BOD)
河川末武川平 田 川切 戸 川
類型AABAB
環境基準値2mg / L 以下2mg / L 以下3mg / L 以下2mg / L 以下3mg / L 以下
年度
1978年1.75.84.04.03.7
792.25.64.02.93.1
801.63.73.42.72.5
812.14.84.72.93.0
821.74.23.63.12.7
831.74.03.72.52.3
841.93.63.73.12.8
852.14.43.53.02.3
値は、各類型の環境基準点の平均値(mg/l)


河川調査地点図

 八四年十二月大海町水源地(市上水道用)から、テトラクロロエチレンが水道水の暫定基準(〇・〇一ミリグラム/リットル)を超え(最高値〇・一四ミリグラム)ることが判明し、マスコミに大きく取りあげられた。市はただちに市民の健康に遺憾のないよう、つぎの調査と対策を講じた。①大海町水源地の取水を中止、②汚染地域の確定と追跡調査の実施(中村小学校付近から大海町付近間)、③汚染地域市民で井戸水を使用している家庭に、上水道への切替え指導と経費の融資および利子補給、④使用事業場に対し立入調査の実施。以後も厳重な監視を継続しているが、地下水への混入が完全に除去されるには、相当な期間を要するとみられる。