しかし、下恋ケ浜住民の、将来の公害に対する不安を取り去ることができず、同年六月恋ケ浜埋立対策委員長(下恋ケ浜住民代表)から「下恋ケ浜地区環境保全に関する要望書」(全面移転要望)が山中市長に提出された。
この要望に対して、市は困難であるとの判断を示したため、市議会(調査特別委員会)が依頼した専門家から「下恋ケ浜地区は、長期的に住宅地域としての性格は不可能で、環境整備または全面移転を含めて対応策を話し合い計画化すべきである」との意見が出され、市議会はこの意見を了承した。
翌年二月周南地区が第五次公害防止計画策定地域に指定され、市長は工業用地造成計画時よりもっていた緩衝緑地構想(国道一八八号線全域、海側に工業専用地域と他地域との緑地分離帯の設置)を計画化することにより、全面移転を図る方針を打ち出した。そこで同年四月、市・市議会・恋ケ浜自治会の三者で、恋ケ浜環境対策協議会を発足させ、全面移転(跡地は緩衝緑地化)を図ることとした。
七三年三月市長は、移転地を末武貯油所(工業用地造成後移転)跡地とした恋ケ浜移転計画案を協議会に提示し、同年十二月合意に達した。この緩衝緑地計画を含む周南公害防止計画は、翌年十二月周南都市計画緑地事業第三号下松海岸通り緑地(二一・九ヘクタール、うち恋ケ浜六・三ヘクタール)として計画決定された。事業は公害防止事業団に採択(委託施工)され、七五年六月下松市と公害防止事業団との間で「下松地区共同福利施設建設譲渡契約」を締結して、公害防止事業団下松建設事務所が発足し、緩衝緑地事業を開始した。
この間、日石精の恋ケ浜新製油所用地に、末武貯油所の移設が完了し、事業団は跡地のうち四・八五ヘクタールを買収して、移転地とするための宅地造成(区画整理事業)を行い、同時に下恋ケ浜(一一〇戸、一六〇世帯、五〇〇人)の移転補償を進め、七九年三月全戸の移転を完了した。
ただちに、緑地造成を進め、翌年三月全事業を終了し、公害防止事業団から下松市へ施設の引渡しが行われた。事業の概要は表16のとおりである。
表16 恋ケ浜緩衝緑地事業概要 |
事業費 |
費 目 | 金 額 | 備 考 |
千円 | 千円 | |
用地補償費 | 2,759,000 | 用地1,044,000 (46,900m2) |
工事費 | 414,000 | 補償1,715,000 (建家120) |
事務費 | 209,000 | |
建設利息 | 385,000 | |
計 | 3,767,000 |
費用負担 |
負担区分 | 金 額 | 備 考 |
千円 | ||
国 | 1,073,000 | 国庫補助 |
県 | 629,000 | 県費補助 |
市 | 690,000 | |
企業者 | 1,375,000 | 日立、日石、中小企業用地 |
計 | 3,767,000 |